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清水寺と音羽の滝、京都が誇る大寺院で奥に潜む信仰のルーツと秘密に触れる旅

記事公開日:2016/03/11

世界遺産にも登録されている京都の「清水寺」。参道の清水坂や産寧坂、二年坂などは一大観光スポットとされ、京都市内を一望する「清水の舞台」や、霊水が流れ落ちる「音羽の滝」などもよく知られ、日々多くの観光客で賑わっています。今回は改めてこの大寺院を見つめ直し、その奥深い信仰のルーツや秘密に触れる旅へとご案内します。

清水寺、清水の舞台

※写真は清水の舞台

 

清水寺の名は清い水流に由来するもの。境内の「音羽の滝」が信仰の原初となった

 

京都、東山の音羽山山腹に伽藍を広げる「清水寺」は、世界遺産にも登録されている大寺院。国宝である本堂は「清水の舞台」と呼ばれる懸造(かけづくり、舞台造)で知られます。境内の名所である「音羽の滝」には湧水が流れ落ち、御祈祷水、音羽霊水とされています。

 

音羽の滝

※写真は音羽の滝

 

縁起によると、宝亀9年(778年)に僧・賢心(延鎮)が、夢のお告げに導かれて音羽山で輝く水流を見つけ、その源で千手観音を念じる行叡という白衣の僧に出会います。賢心は行叡という僧が残した霊木に千手観音を刻んで堂に安置し、清水寺の始まりとします。

 

音羽山山麓の清水寺伽藍(西門と三重塔)

※写真は音羽山山麓の清水寺伽藍(西門と三重塔)

 

日本各地の清水寺に伝わった、千手観音の信仰と「瑞光縁起」の秘密

 

京都の清水寺と同名の寺院は全国にあります。清水寺という名前は清い水流(湧水)に由来するものであり、縁起では山中に輝く水流を霊体とします(瑞光縁起)。そして全国の殆どの清水寺が千手観音を本尊としています。

 

新潟県佐渡市の清水寺の縁起では、賢応法師が川の流れに光明を見つけ、その源で赤々と照り輝く童子に出会い、堂宇(堂の建物)を建立します。また、島根県安来市の清水寺では、尊隆上人が瑞光を求めて山に入り、白髪の老人から霊像を託されます。そして上人が堂に霊像を安置するや傍から霊水が湧き出します。さらに福岡県みやま市の清水寺では、伝教大師が山中に輝く光を見つけ、白雉の案内で山に入り、光明輝く霊木に千手観音を刻んで堂を建立します。日本各地の清水寺の縁起はそれぞれに相似していて、京都の清水寺の瑞光縁起が全国に移植されたものとも見えます。

 

西門から望む京都の街並み

※写真は西門から望む京都の街並み

 

清水寺に関わる水流神「瀬織津姫神(せおりつひめ)」

 

長崎にある清水寺は千手観音を本尊とする安産祈願の寺。この寺の縁起によると、開祖である慶順が「白気」が立ち昇る地を訪ね、老樹の下の大石を「瑞光石」と名づけて堂を建立し、観音の霊場としました。そしてこの寺の境内に「桜姫美人明神」が祀られました。この桜姫美人明神は隣接する八坂神社の境内社にも祀られていて、地主神として以前からこの地にあったとも見えます。そしてこの桜姫の存在こそが、清水寺の水流神である「瀬織津姫神(せおりつひめ)」を想起させます。

 

桜姫の別名をもつ瀬織津姫は桜木に纏わる神であり、大祓詞に登場する災厄抜除の祓(はらい)神。祓神の八十枉津日などと同神とされ、天照大神の荒魂ともされます。そして瀬織津姫は湧水神、滝神、水流神でもあり、多くの場合、湧水や滝、水流の傍に祀られます。長崎の清水寺の立地も風頭台地の周縁崖であり、伏流水などの湧水の痕跡が見られます。

 

長崎にある清水寺

※写真は長崎にある清水寺

 

また、縁起においては瑞光と同じ意義で使われる「白気」の存在があります。京都の清水寺の縁起には白衣の僧が登場し、各地の清水寺の縁起にも、白髪の老人や白雉などが登場します。白気などの白いものとは、山中に輝く滝や水流を象徴するものとされ、紀伊の霊地「那智の滝」にもかつて瀬織津姫神社が鎮座していました。ちなみに那智の祭祀の創始譚も、海上から山中に「白妙」を認めて霊地と定めたとします。ここで言う白妙とは山中に白く輝く那智の滝のこと。そして、那智の青岸渡寺では滝神の本地仏として、やはり千手観音が安置されます。

 

世界中から観光客が訪れている清水寺

※写真は世界中から観光客が訪れている清水寺

 

清水寺信仰と瀬織津姫神祭祀の重なりは、原初の神仏習合

 

瀬織津姫神は水流神、湧水神、滝神、桜木神といった多くの性格を有し、その原初は縄文の自然神ともされます。先ほどご紹介した紀伊・那智の信仰も、滝を霊体とする原始信仰に始まると言われます。また、神仏習合の発端が仏徒の山岳修行における自然信仰との関わりとされます。

 

瀬織津姫神は水流にあって、穢(けが)れを押し流す厄除の祓神であり、清水寺がその厄祓いの祈願寺とされ、音羽の滝(湧水)が清めの水とされる。そんな共通点があります。また、日本各地の清水寺が桜木の名所とされ、子安や安産祈願の寺ともされることは、女神祭祀を想起させます。中世の神仏習合の時代には、瀬織津姫の本地仏が千手観音とされたことも興味深い点です。清水寺の信仰には、太古の水流神である瀬織津姫の祭祀に仏の教えが重なった、原初の神仏習合の姿が見えるのです。

 

今回ご紹介した京都・東山旅のスポット

 

名称:音羽山清水寺
住所:京都市東山区清水1-294
アクセス:京都市営バス、京阪バス「五条坂」「清水道」徒歩10分
駐車場:周辺に駐車場あり(有料)
参考リンク:音羽山清水寺の公式サイト

 

【参考情報】日本各地の清水寺群

 

・岩手県花巻市 音羽山清水寺
・群馬県高崎市 華蔵山清水寺
・栃木県栃木市 金滝山清水寺(滝の観音)
・茨城県那珂市 東皐山清水寺
・東京都台東区 江北山清水寺
・千葉県香取市 弘冨山清水寺(清水子育観世音)
・長野県山形村 慈眼山清水寺
・長野県松代町 龍燈山清水寺(北信濃厄除大師)
・新潟県佐渡市 東光山清水寺
・岐阜県富加町 白華山清水寺
・大阪市天王寺区 有栖山清水寺
・兵庫県加東市 御嶽山播州清水寺
・島根県安来市 瑞光山清水寺
・山口県山口市 花瀧山清水寺
・福岡県うきは市 潮源山清水寺(清水湧水)
・福岡県瀬高町 本吉山清水寺
・佐賀県小城市 清水観音霊場(清水の滝)
・長崎県長崎市 長崎山清水寺
・大分県宇佐市 補陀山清水寺
・大分県杵築市 清水寺(清水寺霊水)
・熊本県南阿蘇(白水)村 雲龍山清水寺
・鹿児島県川辺町 清水磨崖仏群(清水の湧水)

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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