六道珍皇寺、あの世へつながる井戸と待ち受ける閻魔大王、生死の境目を巡る旅
六道の辻という石碑が立つ「六道珍皇寺」。今回はあの世への入り口であり、閻魔大王に裁きを受けるこのスポットを巡り、その奥深い魅力と見所を知る旅をご紹介していきます。
※写真は六道珍皇寺の門前
六道の辻はあの世への入り口。死の六道とも呼ばれ、閻魔大王が待ち受ける
ようこそ、この世とあの世をつなぐ場所へ。ここは「六道の辻」と呼ばれる冥界への入り口。この門をくぐった先には生と死の世界の境目があり、その奥には「閻魔大王」が訪れる人を待ち受けています。別名、「死の六道」とも呼ばれるこのスポットの奥へ早速進んでみます。
京都の三大葬送地の1つ、鳥辺野へと続く「六道珍皇寺」
この世とあの世をつなぐ場所となっている「六道珍皇寺」。京都では六道さんとも呼ばれるこの寺は、臨済宗建仁寺派に属する寺院で、創建は平安時代の836年頃と伝えられます。そしてこの寺から東へと進んだ山あいの一帯、観光地として有名な清水寺の隣には「鳥辺野(とりべの)」という場所があり、かつてその地は京都の三大葬送地の1つに数えられていました。
はるか昔、奈良時代の頃などは、庶民は死んだ人の遺体を川の河川敷などに野ざらしにしていたと言われます。しかし平安時代に入り、鳥辺野、化野、蓮台野の3つが都の風葬地となり、この六道珍皇寺は風葬地・鳥辺野へと続く道の途中にあったと言います。
※写真は六道珍皇寺の閻魔堂(篁堂)
小さな格子窓に顔を近づけ、そっと奥を覗けば
六道珍皇寺の門をくぐった先のお堂には、「閻魔大王」を示す文字があり、「この格子窓よりお参り下さい」と書かれています。小さな格子窓へと顔を近づけ、恐る恐るお堂の中を覗いてみると、閻魔大王がこちらを睨みつけていました。
※写真は閻魔堂(篁堂)に鎮座する閻魔大王
閻魔大王は地獄の主。裁きを受けて六道のいずれかへと転生する
小さな格子窓を片目で覗くと、目の前に閻魔大王が。顔が怖いのはもちろんなのですが、頭に「王」と書かれた冠を被っておられるのがなぜか目立ちます。皆さんもあの世へ行く時は、地獄の主である閻魔大王に裁かれることになるので、先にここで手を合わせて幸せになれるように祈りましょう。
ちなみに冒頭でご紹介した六道の辻の「六道」とは、仏教における六つの世界を表し、「天道」「人間道」「修羅道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」に分かれています。天道はいわゆる天国のようなイメージの世界で、人間道はこの世、修羅道は怒りと戦いに満ちた修羅の世界、そして畜生道は人間以下、餓鬼道は飢えと苦しみに満ちた世界、そして最後の地獄道はさらにその下の辛い世界なのだそうです。人間は死後、閻魔大王によって裁かれ、この六道のいずれかの世界へと転生していく事になると言います。
野狂と評された一方、多才であり、小倉百人一首にも登場する「小野篁」
また、同じお堂の中には「小野篁卿の木立像」という像もあります。平安時代の貴族であった小野篁(おののたかむら)は、優れた人物である一方、歯に衣着せぬ物言いや持ち前の反骨精神から、人々の間で野狂とも評された人物であったと言います。また、隠岐の島へと島流しになった経歴もありながら、歌人としても才能を発揮し、小倉百人一首では参議篁としても登場しています。
※写真は閻魔堂(篁堂)に鎮座する小野篁卿
夜になると冥土通いの井戸から閻魔庁へと出勤、死の六道と生の六道とは?
こちらが小野篁卿の木立像。すぐ隣には餓鬼のようにも見える像の姿も。伝説では、小野篁は閻魔大王のもとで裁判の補佐を行なっていた人物と言われ、昼間は朝廷で働きつつも、夜になると「冥土通いの井戸」を通じて冥府の閻魔庁へと出勤し、朝方になるとまたこの世へと戻っていたと言います。
尚、六道珍皇寺にある「冥土通いの井戸」は、「死の六道」と呼ばれるあの世への入り口に当たり、朝方にこの世へと戻って来る際は、「生の六道」という別の井戸を使用していたのだそうです。この生の六道と呼ばれる井戸は、現在の大覚寺の門前、六道町と呼ばれる辺りに残っているそうですが、井戸のある福生寺という寺自体は既に廃寺となっているそうです。
※写真は六道珍皇寺の「鐘楼」
あの世(冥土)まで鳴り響くという「鐘楼のお迎え鐘」
さらに奥へと進むとユニークな「鐘楼」があります。外観は土壁に囲まれ、外から鐘を見る事ができない造りになっているのが特徴的です。毎年お盆になるとこの鐘楼の鐘を鳴らし、冥土にいる精霊たちを迎えることから「お迎え鐘」と呼ばれています。鐘楼の中央には小さな穴が開き、そこからは一本の綱が伸び、この綱を引けば鐘の音が鳴り響き、その音はあの世にも聞こえると言います。
鐘楼では訪れた人も鐘を鳴らす事ができるようになっています。引き手の綱の前にはこんなメッセージも書かれていました。「鐘は心で鐘を撞くもの、音の大きさではなく、慈しみの心で撞きましょう」。
本堂の裏庭からあの世へ。最奥にある「冥土通いの井戸」
そして一番奥にある本堂の裏庭には、あの世への入り口である「冥土通いの井戸」があります。通常は本堂の外から庭の様子を眺めるだけとなりますが、特別公開のタイミングや、団体での予約といった時であれば、あの世へとつながる井戸の様子を見ることができるのだそうです。
※写真は「冥土通いの井戸」がある六道珍皇寺の裏庭
こちらが本堂の裏庭。奥には小さな社があり、その右の方にあの世へとつながる井戸があります。小野篁が夜な夜なこの井戸からあの世へと向かっていたと言いますが、井戸の先にはどんな世界が待ち受けているのでしょうか。もう少し頑張ってこの世で生きないと、閻魔大王に良い裁きが頂けないかもしれません。
あの世へと通じるこの地では、お盆になると「六道まいり(お精霊さん迎え)」の行事が行われます。鐘楼の鐘を鳴らして精霊たちに盆を告げ、その魂を迎える。懐かしい我が家へと少しの間だけ里帰りさせてあげる。1,000年を超える歴史を持つ京の都では、この行事が今も受け継がれ、守られています。
今回ご紹介した京都旅のスポット
名称:六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)
住所:京都府京都市東山区大和大路通四条下る四丁目小松町595
拝観時間:9:00~16:00
拝観料金:無料
アクセス:市バス「清水道」バス停から徒歩約5分/京阪電車「祇園四条駅」から徒歩約12分
駐車場:3台分あるが入るのはなかなか難しい場所(近隣にコインパーキングあり)
参考リンク:六道珍皇寺の公式サイト
ニホンタビ編集部
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