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奥嵯峨・滝口寺、新田義貞公の首塚と平家物語の悲しいエピソードが残る地を歩く旅

記事公開日:2016/01/05

奥嵯峨にある「滝口寺」。名のある京都の寺社の数々とは異なるものの、この小さな寺には2つのエピソードが残されています。今回はそのエピソードに触れながら、滝口寺の見所をご紹介する京都旅へとご案内していきます。

滝口寺の山門


廃寺から再興した寺に残る2つのエピソード

 

嵯峨野の竹林から野宮神社、二尊院へと歩き、更に奥地へ進めば、祇王寺や化野念仏寺などのスポットに出会える奥嵯峨エリアへ。今回ご紹介する「滝口寺」は、奥嵯峨にある祇王寺のすぐ隣に位置し、小倉山の麓にひっそりと佇んでいる小さな寺です。

 

はるか昔の平安時代に往生院と呼ばれていた滝口寺は、明治時代の廃仏毀釈の影響を受け、一時は廃寺となってしまい、昭和の時代に入ってからようやく再興され、現在に至っていると言います。長い歴史を持つこの寺は、平家物語における滝口入道(出家前の名前は斎藤時頼)と横笛という女性の悲しい恋愛エピソードにまつわる寺であり、太平記の時代に登場する武将、新田義貞の首が葬られているという寺でもあります。

 

新田義貞公の首塚と勾当内侍の供養塔を示す案内板

 

この地にひっそりと葬られたという新田義貞公の首

 

滝口寺の小さな山門をくぐり、拝観料金を納めた場所のすぐ左先に立てられていたのがこの案内板。足利尊氏とともに鎌倉幕府を滅ぼしながらも、激変する時代の波に翻弄され、最期は越前国(現在の福井県)で思いがけず戦の矢に当たってしまい、命を落とした新田義貞。妻であった勾当内侍(こうとうのないし)が都に晒されていた新田義貞の首を持ち出し、この地にひっそりと葬ったとも伝えられています。

 

新田義貞公の首塚①

 

新田義貞公の首塚②

 

名門の武将でありながら、悩み、比較され、最期は無念の死を遂げた新田義貞

 

ここが新田義貞公の首塚です。もともとは源氏の中興の祖である源義家の三男、源義国から続く家系に生まれた新田義貞。鎌倉幕府を開いた源頼朝は源義家の次男、源義親から続く家系であるため、新田義貞も大きな力、影響力を持ってもおかしくない生まれのはずでした。しかも、ライバルとなった足利尊氏も祖先を辿れば新田義貞と全く同じ源義家の三男、源義国。この源義国の長男が新田氏を名乗り、次男が足利氏を名乗っていくことになるため、足利氏にとっての新田氏は、いわば兄貴分とも言えるような存在だったのだろうと思います。

 

そして建武の新政以後、朝廷に対して反旗を翻した足利尊氏を討伐する目的で官軍を率いたはずの新田義貞が、最期は足利氏から朝廷に抗う反乱軍というレッテルを貼られてしまい、無念の死を遂げてしまう。時代の趨勢が読めなかった武将、機を見るに敏という能力が足りなかったなど、後の時代の人々は様々な評価を行いますが、義貞本人としては、信義を貫き、ただ真っ直ぐに、実直に生きたかっただけなのかもしれません。そう思ってみると、この武将に対してどこか人間味を感じてきます。

 

石段を登って寺の奥へ

 

新田義貞公の首塚から石段を登って寺の奥へ。奥には古い茅葺き屋根の庵のような建物が立ち、ゆっくりと腰を下ろして一息つける、憩いの場になっていました。

 

滝口寺の庵から庭の景色を望む

 

休憩所となっている庵に腰掛けて庭を望む。庵の中では「朽ちた茅葺き屋根の修繕がずっとできていなくて申し訳ないです」といったような文章が書かれていました。こちらのお寺は拝観料金も京都の大きなお寺より安くなっていて、訪れる観光客の数も随分と異なるため、この庵の茅葺き屋根を修繕に苦労されているのかもしれない。ふとそんな風に感じてしまったひと時でした。

 

滝口寺に建つお堂と茅葺き屋根の庵

 

滝口寺のもう1つのエピソード「横笛と滝口入道の悲しい恋」

 

平家物語の中で伝えられている、横笛という女性と斎藤時頼(後の滝口入道)の悲しい恋のエピソード。平清盛の息子である平重盛に仕えていた斎藤時頼は、同じく平重盛の妹である建礼門院に仕えていた横笛という女性の美しさに一目惚れしてしまいます。

 

そして横笛も斎藤時頼の求愛を受け入れますが、身分の違いを理由に二人の恋愛は許されませんでした。その後、時頼は横笛への想いを断ち切るために出家し、この地で修行に励みますが、ある時横笛がこの地で修行を行う時頼(滝口入道)を見つけ出します。しかし既に出家していた時頼(滝口入道)は、横笛の想いに応えずに帰すという決断をします。そして横笛はその悲しみから病となってしまい、ついには帰らぬ人へ。人づてにその事を知った時頼(滝口入道)は一層修行に励み、高野の聖になっていったと言います。

 

横笛の事を忘れるために出家した時頼(滝口入道)の心の動揺、そしてずっと時頼(滝口入道)の事を想い続けた横笛という女性。お互いに想いは繋がりながらも、最後まで一つになることはなかった。そんな悲しい逸話が残されています。

 

小さな前掛けを着けたお地蔵様

 

滝口寺を出ると、目の前には小さな前掛けを着けたお地蔵様の姿が。静寂に包まれた奥嵯峨で、ずっと昔からこの地にまつわる人間模様を見てきたのかもしれない。可愛らしい前掛けをしたお地蔵様の姿はとても印象的でした。

 

今回ご紹介した京都旅のスポット

 

名称:滝口寺(たきぐちでら)
住所:京都府京都市右京区嵯峨亀山町10-4
拝観時間:9:00~17:00
拝観料金:大人300円・中高生200円・小児50円
アクセス:市バス「嵯峨釈迦堂前」バス停から徒歩約15分/嵐電「嵐山駅」から徒歩約25分
駐車場:専用駐車場はなし(近隣の別パーキングを利用)

 

plastictニホンタビ編集部

日本には奥深い魅力を持った素晴らしいスポットがたくさん!ニホンタビがもっと楽しくなる、そんな大人のための旅行情報を発信していきます。

 

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