奥嵯峨・祇王寺、美しい苔庭の奥に残る平家物語のエピソードを知る京都旅
遥か昔、往生院と呼ばれていた場所に建つ「祇王寺」。美しい苔庭がとても印象的なこの寺には、平家物語の女性たちのエピソードと、歴史を繋いで今に伝えた人々の努力の痕跡がありました。今回は奥嵯峨の地から祇王寺の持つ美しさや見所、歴史をご紹介していきます。
※写真は祇王寺の境内に広がる美しい苔の庭
奥嵯峨の寺で出会う、一際美しい苔庭
京都の中でも一際美しさと風情が感じられる場所として人気の「嵯峨野の竹林」。その竹林をさらに奥へと散策していくと、奥嵯峨と呼ばれるエリアが広がっています。ここは小倉百人一首で知られる小倉山の麓。現在祇王寺と呼ばれているこの寺は、遥か昔の時代には往生院という名前の寺の伽藍があったそうです。そしてかつて寺勢を誇っていたという往生院の跡地は、鮮やかな緑色の美しい苔庭となっていました。
※写真は祇王寺の参拝口へと続く参道
※写真は祇王寺の参拝口
遥か昔、往生院と呼ばれた場所には平家物語のエピソードが残る
奥嵯峨の小道を奥まで進んでいった先にある祇王寺。小倉山の麓のこの一帯には、今回ご紹介する祇王寺と、もう1つ滝口寺という寺があります。滝口寺は太平記で有名な武将、新田義貞公の首塚がある場所として知られ、この祇王寺は、平家物語の一節に登場する女性たちが出家した尼寺として知られます。
※写真は苔庭から草庵を望む景観
苔庭と美しく調和する小さな草庵
祇王寺の境内中央に広がる苔庭。周囲には苔庭をぐるりと囲むように小道が設けられ、様々な角度からこの苔庭の景観を目にする事ができるようになっています。また、境内の奥はほんの少しだけ高台となっていて、そこには小さな茅葺きの草庵が佇み、この苔庭の景色と美しく調和する姿を見せてくれます。
※写真は境内の奥に広がっている竹林
ありのままの静寂、そして自然の音色
境内の最も奥には竹林が広がり、ほんのりと薄く陽の光が差し込んで、流れゆく風たちがさらさらと鳴る竹林の音を聞かせてくれます。この奥嵯峨の地には余計な雑音がなく、ありのままの静寂と、時折聞こえてくる自然の竹林の音色が、訪れる私たちの心を優しく癒やしてくれます。
※写真は祇王寺で目にする事ができる様々な苔たち
祇王寺に生息する苔たち
境内の一角には「祇王寺の苔いろいろ」と書かれたとても小さな案内板が。一言で苔庭といっても様々な種類のものがあるそうで、見た目もそれぞれに少しずつ違っています。ここに生息する苔たちの違いを感じながら歩いてみるのも、苔庭の楽しみ方の1つなのかもしれません。
※写真は苔庭を望む高台の草庵
境内の一角には木造や墓も残る
ぐるりと苔庭の周囲を巡った後は草庵へ。こちらの草庵の中には本尊である大日如来、そして平清盛と祇王、妹の祇女、そして祇王の母である刀自(とじ)、さらに仏御前という女性の木造が安置されているそうです。この祇王寺は平家物語の一節に登場する女性たちにゆかりのある寺であり、この地には平清盛の供養塔と女性たちの墓が残されています。
※写真は草庵そばのつくばい
平清盛に愛された白拍子の祇王と仏御前
平家物語の一節に登場する、白拍子の祇王をはじめとした女性たち。時の権力者となった平清盛は、都の中で評判となっていた白拍子(舞女)の祇王を自らの元で寵愛していきます。しかしその数年後に現れたのが、仏(後の仏御前)と呼ばれる新たな若い白拍子。当初、自らの舞を見て欲しいと清盛の元を訪れた仏を清盛は全く気にかけず、仏には会わないままに追い返してしまおうとします。
※写真右は平清盛の供養塔。そして左は祇王、妹の祇女、母親の刀自の墓
しかし、それを可哀想に思った祇王が対面だけでもと清盛に声をかけ、清盛はこの若い白拍子の仏と対面する事になります。そして仏と対面した清盛はすっかり仏に心を移してしまい、間を取り持っただけのはずの祇王の方が立場を追われる事になっていきます。そして捨てられてしまった祇王と新たに愛された仏。しかし仏自身もそんな出来事を心苦しく感じ、祇王たちに続いて尼になってしまう。それから祇王たち、そして仏はひたすら念仏を唱えながら、ひっそりと暮らしていく事になったのでした。
※写真は草庵の内部。奥には独特の風情を持つ吉野窓が見える
草庵の奥の吉野窓は、別名「虹の窓」とも呼ばれる
周囲に小さな水琴窟やつくばいを配している草庵の中へ。奥に見える円形の窓が、この草庵の雰囲気に大きな影響を与えているように思えます。この円形の窓は「吉野窓」と呼ばれるそうで、窓に差し込む光の具合によって、その影が虹色に色づいてみえる事から「虹の窓」とも言われているそうです。
※写真は境内奥から望む苔庭の姿
時代を超えるエピソード、そして歴史を繋いでいった人々の痕跡
祇王と仏御前、そして平清盛にまつわるエピソードが残されているこの寺は、明治時代の初めに廃仏毀釈の影響を受けて廃寺となってしまいます。しかし、大覚寺の47世門跡であった楠玉諦師という人物が再建の計画を進め、当時の京都府知事であった北垣国道という人物がこの祇王たちのエピソードを知り、自ら寄進を行なって現在に至る祇王寺の建物となっているのだそうです。時代を超えて語られるエピソードと、その話を知り、自らの労力や財の寄進で後世へと歴史を繋いでいった人々。美しい苔庭の奥には、そんな素晴らしい話が残されていました。
今回ご紹介した京都旅のスポット
名称:祇王寺(ぎおうじ)
住所:京都府京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32
拝観時間:9:00~17:00(受付終了は16:30)
拝観料金:大人300円/小人(小学生)100円
アクセス:市バス「嵯峨釈迦堂前」バス停から徒歩約15分/嵐電「嵐山駅」から徒歩約25分
駐車場:専用駐車場はなし(近隣の別パーキングを利用)
参考リンク:祇王寺の公式サイト
ニホンタビ編集部
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