鎌倉・宝戒寺の北条執権邸跡、人々の熱い想いが交錯し、栄華と滅亡を悟った地を巡る旅
記事公開日:2015/12/22
鎌倉幕府の時代に栄華を誇り、自らの滅亡の瞬間をも悟った執権の北条一族。今回はかつて北条執権邸があったと言われる寺を訪ね、800年以上の時を経た現在の姿と、その名残の風景を目にする鎌倉旅をご紹介していきます。

※写真は「北条執権邸旧蹟」の石碑
鎌倉の寺院の一角に建つ、北条一族の執権邸跡
ここは鎌倉の宝戒寺(ほうかいじ)という寺院です。そしてこの寺の一角に建つ石碑に書かれているのは「北条執権邸旧蹟」という文字。ここはかつて鎌倉から全国の武士を動かした幕府の執権、北条一族の邸宅があった場所だと伝えられています。

※写真は宝戒寺の門前の風景
かつて「小町亭」と呼ばれたこの地は、鎌倉幕府の中枢とも言える場所
多くの観光客で賑わう鶴岡八幡宮。この鶴岡八幡宮の一の鳥居から東へ3分程度歩いた場所にあるのが宝戒寺です。かつて鎌倉幕府があった頃の鎌倉の街は、鶴岡八幡宮の東側に幕府の御所や御家人の邸宅といった重要な建物が立ち並んでいたと言います。そして鎌倉幕府の最高実力者であった北条一族の執権の邸宅がこの地にあり、「小町亭」と呼ばれていたと言われます。

一族が栄華を誇ったこの地、そして一族の滅亡を悟った瞬間の地
およそ150年に渡って続いた鎌倉時代。ここは北条一族がかつてない栄華を誇った地であり、自らの滅亡を悟った最後の地でもあります。歴代執権職の多くがここにあった小町亭に住んだ時代、どれほどの華々しい暮らしぶりがあったのでしょうか。また、源氏の系統とは言え、一介の御家人に過ぎなかった新田義貞軍に最後の砦を破られ、もはやこれまでと悟った瞬間、帰るところのない北条一族の人々は何を考え、決断したのでしょうか。

※写真は宝戒寺の本堂
800年以上を経た今、三つ鱗の家紋と小さな社が北条家の名残を思わせる
今は天台宗の寺院となっている宝戒寺。鎌倉幕府が崩壊し、北条一族が滅亡してしまった後の1335年(建武2年)、後醍醐天皇の命を受けた足利尊氏がこの寺を建立し、北条一族の菩提を弔おうとしたと言います。それから800年以上を経た現在、残念ではありますが、ここには北条一族の栄華を思わせる風景は残っておらず、只々静寂の空気が流れています。寺の中でその名残を目にする事ができたのは、宝戒寺の門に記された、北条家の三つ鱗の家紋と小さな社だけでした。

※写真は北条得宗家の当主であった北条高時公を祀る徳崇大権現
宝戒寺の境内に建つ「徳崇大権現」の社。華美な装飾もなく、ひっそりと佇むとても小さな社。ここには北条得宗家の当主であり、北条一族を代表する最後の人物であった北条高時公が祀られています。1333年の5月22日、31歳という若さで、ここにあった邸宅を退き、すぐ裏山とも言える場所にある東勝寺という寺で、一族870名以上とともに、自刃して果てたそうです。一時代を現す人物とは思えないほどに、とても小さな社だったのが、どこか切なくも感じられ、印象的でした。

※写真は宝戒寺の境内に建つ小さなお地蔵様。傍らには色美しい花がそっと生けられています。

※写真は宝戒寺の境内に建つ「聖徳太子堂」。聖徳太子は優れた工芸技能者も育成したと言われ、職人の守り神になっているとも言われます。

※写真は聖徳太子に願いを込めた絵馬の数々

※写真は境内にある大聖歓喜天堂。仏教の守護神であると言われる歓喜天は、夫婦和合、子授けの神としても信仰されていると言います。

※写真は境内にある梵鐘
かつて北条一族が栄華を誇ったこの地は、静寂が似合う寺院へと変わっていました。決して派手さはない寺院ではありますが、境内のあちこちには花が生けられている場所が多くありました。
かつての鎌倉幕府の中枢だったこの場所は、春になれば白木蓮などが花を咲かせ、夏には睡蓮やサルスベリが、そして秋になれば萩が美しく咲く寺となり、冬から春先にかけては水仙や椿などが境内を彩ると言います。人々の熱く、激烈なる想いが交錯したこの場所は、時を経て段々と、ありのままの自然の姿へと戻っていっているようにも感じられる、そんな鎌倉旅の風景になりました。
今回ご紹介した鎌倉旅のスポット
名称:宝戒寺
住所:神奈川県鎌倉市小町3丁目5-22
拝観時間:8:00~16:30
拝観料金:大人100円(中学生以上)/子供50円(小学生)
アクセス:JR横須賀線「鎌倉駅」から徒歩約12分程度
駐車場:専用駐車場はなし(近隣にコインパーキングあり)
ニホンタビ編集部
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