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人々の手で守り継がれる東寺、毎月21日の弘法市を訪れ、その歴史と賑わいを知る旅へ

記事公開日:2017/03/27

新幹線の窓からもその姿が望め、京都ならではの趣きを感じさせてくれる東寺の「五重塔」。この五重塔は現存する木造建築物の中では日本一の高さを誇る国宝の古塔です。「東寺」は文化財の宝庫と言われ、弘法大師が造営した真言宗総本山でもあり、毎月1,000軒もの露店が並ぶ縁日、「弘法市」でも大きな賑わいを見せる寺です。

東寺の境内

※写真は東寺の境内

 

平安京への遷都によって建立された官寺「東寺」

 

794年(延暦13年)、時の桓武天皇は奈良時代末期の寺社勢力との政争や、災害等の混乱から体制を立て直すべく、京都へと遷都して都を「平安京」と名付けます。この平安京は中国の長安に倣った条坊制(碁盤の目状)の都市であり、朱雀大路の南端には平安京の正門である「羅城門」を置き、左京(右側)には「東寺」を、そして右京(左側)には「西寺(さいじ)」の二寺を置き、平安京唯一の「官寺」としました。

 

弘法市で賑わう東寺の風景

※写真は弘法市で賑わう東寺の風景

 

建立からの時を経て、弘法大師へと託された東寺

 

そしてその後、中国に渡って修行していた弘法大師空海が嵯峨天皇の信任を得て、弘仁14年(823年)に東寺を託されます。弘法大師は東寺に居を構え、講堂、五重塔などの造営を行い、同時に高野山を修験の地として伽藍の建立を進めました。そしてこの東寺を密教の根本道場、真言宗総本山「教王護国寺」とし、信仰の中心地としました。

 

唯一残されている、平安京の遺構としての顔

 

12世紀の後半、源平合戦の時期には平安京も荒廃し、羅城門や西寺などは失われてしまいます。この時には東寺も戦乱や火災で存亡の危機に晒されますが、時の後白河法皇の皇女・宣陽門院による財政支援や、人々に根付いた弘法大師信仰が大きな支えとなって存続していきます。しかし、文明18年(1486年)の火災では多くの伽藍が焼失。この時には豊臣秀頼が金堂の再建に着手し、江戸時代には徳川家光が五重塔の再建を進め、その姿を現代まで伝えています。

 

近年の発掘調査によると、約1,200年前の創建当時の基壇の上にそのまま再建がなされている事が確認され、平安京当時の街割りを検証できる、唯一の基準点となる重要な遺構としての顔も持っています。

 

国宝である東寺の五重塔

※写真は国宝である東寺の五重塔

 

現在目にする事ができる五重塔は、寛永21年(1644年)に徳川三代将軍、家光によって再建された5代目のもの。高さは54.84mとなっています。これまでに4度の焼失を経験しているものの、文禄5年(1596年)の慶長伏見地震(推定でM7.25から7.55クラス)では倒壊を免れた建物と言われます。東寺のパンフレットを読むと、各層が積み上げ構造になっていて、木材同士が緊結されていない柔構造。そして復元力が大きいために、地震に強いと考えられるとありました。

 

尚、塔の内部は心柱を大日如来に見立て、周囲に金剛界四仏坐像・八大菩薩を安置。通常は非公開となっているものの、稀に特別公開も行われています。

 

東寺の金堂

※写真は東寺の金堂(国宝)

 

東寺の金堂の方は1486年に焼失し、今の金堂は1603年に豊臣秀頼が再建したものとなっています。内部には薬師三尊(薬師如来像・日光・月光)が安置され、十二神将は桃山時代の名作として知られ、共に重要文化財となっています。

 

東寺の講堂

※写真は東寺の講堂(重要文化財)

 

講堂に関しては天長2年(825年)に弘法大師によって着工され、承和2年(835年)に完成しています。その後は度々焼失したものの、延徳3年(1491年)に再建。講堂の中には密教浄土を表す「立体曼荼羅」21体の仏像(国宝16点・重文5点)が安置されています。

 

弘法大師が住んだと言われる御影堂では、今も生身供が行われる

 

弘法大師は「御影堂(大師堂)」の場所に住房を構えていたと言われ、今現在も毎朝、御影堂では一の膳、二の膳、お茶をお供えする「生身供(しょうじんく)」が行われています。

※平成28年7月から平成31年12月までは、檜皮屋根の張替えなど建物を修理中

 

弘法市で賑わう境内の様子

※写真は弘法市で賑わう境内の様子

 

「弘法市」は毎月21日に開かれるビッグイベント

 

弘法市で見かけた一品たち

※写真は弘法市で見かけた一品たち。700年を超える歴史を持つ、世界遺産でのフリーマーケットです

 

延喜10年(910年)に始まったという「御影供」。これは弘法大師に報恩感謝する4月21日(入寂の日)の法要であり、いつしか毎月行われるようになり、多くの人々が集って茶店が立つようになったと言われます。

 

現在の弘法市は約1,000店近くの露店が並ぶ「なんでも市」になっていて、毎月20万もの人々が訪れるというビッグイベントです。毎月21日になると早朝から日没まで市が行われ、植木市、がらくた市、骨董市、古着市など、種々雑多な店が並び、境内に入りきれないお店が外まで溢れるほどとなっています。

 

様々なものが並ぶ弘法市の風景

※写真は様々なものが並ぶ弘法市の風景

 

写真はその他のお店にて

※写真はその他のお店にて。ありとあらゆるものが揃う、圧倒的な品揃えに驚きです

 

数多の文化財と世界遺産、そして今も人々の暮らしに息づく場所

 

密教美術の宝庫と言われる東寺には、国宝だけで25件80点、重要文化財で52件23,603点が所蔵されています。さらに「東寺百合文書(ひゃくごうもんじょ)」(国宝)と呼ばれる、8世紀から18世紀までの1,000年以上に渡る約2万5千もの膨大な文書も伝えられ、2015年には「ユネスコ世界記憶遺産」にも登録されています。

 

かつての平安京の姿を今に伝え、人々の手で大切に守り継がれてきた貴重な遺産「東寺」。今もここは人々の暮らしに息づく場所であり、親しまれ続けています。

 

今回ご紹介した京都市南区の旅行スポット

 

名称:東寺(真言宗総本山・教王護国寺)
住所:京都府京都市南区九条町1番地
アクセス:JR京都駅(八条口)下車。徒歩約15分(1.1km)
参考サイト:東寺公式サイト 東寺百合文書WEB

 

播磨翁播磨翁

兵庫県の播磨国に在住。ワクワク出来る歴史旅をご紹介できれば幸いです。個人的には謎がありそうなディープな歴史が好きです。

 

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