天然素材100%、世界にたった1つのクレヨンを作り続ける北海道の小さな工房を巡る旅
記事公開日:2016/02/16
北海道東部の田舎に佇む小さな工房。この地で手作りされている天然素材100%のクレヨンは、化学物質アレルギーの男の子のための1本から始まりました。今回は人に優しい、心彩るクレヨンを作り続ける、小さな工房の北海道旅をご紹介していきます。
北海道の山の麓で手作りされている「天然素材100%のクレヨン」
ここは北海道標茶町虹別原野。かつて小学校があったこの地の隣りに、元青年会館だった建物を改装した小さな工房があります。名前は「手作りクレヨン工房 Tuna-Kai(トナカイ)」。これはアイヌ語の読み方を表現したものだそうです。春から秋まで開いているこの工房兼店舗は、工房の主である伊藤朋子さんと、彼女の想いに共感する人たちが4年もの歳月をかけて改築し、現在へと至っています。
子供たちへ、化学物質、素材以外の着色料無添加を
工房の伊藤さん曰く、「市販のクレヨンとは別もの、とまずは思って頂ければ」と話します。このクレヨンは化学物質アレルギーの男の子のために作られたのがきっかけだそうで、最低限必要な材料以外は何も入っていません。また、クレヨンそのものだけでなく、クレヨンを囲む紙にも配慮がなされています。ここで生まれるクレヨンの色は、100%天然の素材によるものなのです。
「素材の名前」が「色の名前」
色の元となる顔料は、春に工房の周囲に咲くコウリンタンポポやエゾヨモギ、黒土や黄土、オホーツクの海でとれるホタテの貝殻や山のオニグルミ、ドングリなど。身近な草木や土、実などから伊藤さん自らが色を取り出したものだそうです。そして100gの材料から、2週間かけて取り出せる顔料はわずか10分の1ほど。そこに蜜蝋などを混ぜて型枠に入れ、乾燥して出来上がるまでにはさらに2週間。気泡が入ったものや、形の崩れたものは再び煮溶かして原料とし、伊藤さんの厳しいチェックを経てようやく出来上がったものが店頭に並ぶのです。
シリアルナンバー入り。世界にたった1つのオリジナルの一本
完成したクレヨンのラベルには、顔料を作った年月とクレヨンを作った年月、そして何番目に作ったかがわかる「シリアルナンバー」も入れられています。しかし、こうしてできたクレヨンですが、素材や作った時期によってはわずかな個体差が生じます。また、色止めや保存料などが入っていないため、だんだん固くなったり、白くなったりもしていきます。しかしそれこそが「天然素材100%」の証。伊藤さんは白く固くなった初期のクレヨンを見ながら、より良いクレヨンにするために、顔料を増やしたり、相性の合う素材を探してみたりと、日々開発を続けているそうです。
心が喜ぶ、天然素材100%の感触
実際にこのクレヨンに触れてみると、その心地よさにホッとすると思います。スッとクレヨンを動かしたときの蜜蝋の描き心地と、そこから生まれ出てくる色の優しさ。一般的に市販されているクレヨンでは決して出てこない、パステルカラーともまた違う独自の色合い。このクレヨンでただ線を一本描くだけでも、「自然から生まれた色」そのものが、描いた人の心を優しく鮮やかに彩ってくれると思います。
このクレヨンに共感した「12人の作家たち」の世界
今、このクレヨンに共感した絵本作家やマンガ家たちが彩る「Tuna-kaiと12人の作家展」が、北海道旭川市を皮切りに、全国各地で始まっています。この天然素材のクレヨン、そしてクレヨンと同じ顔料の絵の具を使った作品の数々。同じ画材なのに、作家さんによってこうも別な表現ができるものなのかと驚かされます。
工房の伊藤さんは話します。「無機質な色ではなく、1つ1つ生きていた色ならではの個性を楽しんでもらいたいです。優しかったり、薄かったり、描き心地もそれぞれに違う。それに戸惑うか、楽しむかなのですが、私は楽しんでもらいたいです。子どもたちがそれぞれ個性的であるように、色にも個性を出してみたクレヨンです。道具としての画材ではなく、自然と共に遊べる画材として楽しんでもらえれば。」そんな話が印象的な今回の北海道旅でした。もしあなたも自然の色に触れたくなったら、ぜひこの地へ足を運んでみてください。
今回ご紹介した北海道・標茶町のスポット
名称:手作りクレヨン工房「Tuna-Kai(トナカイ)」
住所:〒088-2464 北海道川上郡標茶町虹別原野704-3旧中虹別青年会館
電話:090-4736-4789
参考リンク:手作りクレヨン工房「Tuna-Kai(トナカイ)」の公式サイト
Reiko
フォトライター。北海道の東から、心を動かされる風景など、旅したくなる北海道の情報を発信していきます。
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