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東北が誇る名城・会津若松城、名将たちが居城とし、戊辰戦争の舞台となった地を訪れる歴史旅

記事公開日:2017/02/21

「鶴ヶ城」とも呼ばれる会津若松城は、伊達政宗や上杉景勝など、名だたる武将たちもかつて居城とした城。文禄の頃には築城の名人、蒲生氏郷が近世城郭として層塔型の天守などを整備しています。また、幕末の戊辰戦争の際には薩長軍との間で激しい攻防戦が繰り広げられ、白虎隊の悲話なども今の時代に伝えられています。今回は改めて歴史と風格を兼ね備えた会津若松城を訪ね、美しい白亜の城に秘められた歴史に思いをはせる旅へとご案内します。

雪景色が美しい会津若松城の天守

※写真は雪景色が美しい会津若松城の天守

 

度重なる城主の交代。そして幕末の壮絶な戦い、歴史に翻弄された東北の名城

 

福島県会津若松市の若松城は、5層の層塔型天守が落ちつきのある美しさを見せる城。この城は室町時代、葦名氏が城館を築いたのが始まりとされ、戦国時代の天正17年(1589年)には伊達政宗が蘆名氏を滅ぼして入城します。しかし、政宗は翌年、豊臣秀吉によって会津を召し上げられ、代わって蒲生氏郷が入封、その際に城を近世城郭へと改造し、城下が整備されました。そして文禄2年(1593年)には華麗なる層塔型の天守が完成し、城を「鶴ヶ城」、そして城下を「若松」としました。

 

城郭を整備した蒲生氏は後に家中騒動によってに移封、そして越後から上杉景勝が120万石で入封します。しかし、慶長5年(1600年)に行われた天下分け目の戦、関ヶ原の戦いの後には、上杉氏が徳川家康によって出羽に移封されてしまいます。以降は蒲生氏の再入封、加藤嘉明の入封と続き、寛永20年(1643年)に江戸幕府の3代将軍、徳川家光の庶弟である保科正之が23万石で入封。その後保科氏は松平へと改姓し、明治維新まで会津松平家の居城となりました。

 

幕末の戊辰戦争では会津戦争の舞台となり、1ヶ月にも及ぶ激しい攻防戦によって、若松城は激しく損壊してしまいます。そして戦後には天守や本丸御殿などの全てが破却され、一時はその存在が潰えてしまいました。しかし、昭和40年(1965年)にようやく城は再建され、この美しい姿を取り戻したのです。

 

春の桜が映える天守

※写真は春の桜が映える天守。寒冷地ならではの赤瓦と、白壁が見事なコントラストが印象的です

 

旧幕府勢力の中枢として、新政府軍の攻撃目標にもなった悲劇の城

 

会津若松と言えば、幕末の会津藩主であった松平容保(かたもり)の時代が特に有名かもしれません。松平容保は京都守護職として新撰組を配下にするなど、幕府方の中核として尊皇攘夷派の排除を行います。そして江戸幕府が大政奉還した一年後の慶応4年(1868年)に戊辰戦争が起きると、会津藩は旧幕府勢力の中枢と見なされてしまい、薩長を中心とした新政府軍の攻撃目標となりました。

 

時は慶応4年、8月23日の朝、新政府軍は怒涛の如く若松城下に侵攻します。そして最新の装備を誇る新政府軍を前に、武勇で知られた会津藩の守備隊も外堀などで敗退、ついには若松城に篭城する事となります。

 

かつてこの若松城は「東北の要塞」とも呼ばれ、高さ20mに及ぶ石垣と、12の櫓による堅固な縄張りを誇った城。それに対して新政府軍は城下の南東、小田山に最新のアームストロング砲など15門を設置し、若松城に砲撃を仕掛けます。やがて8,000発もの砲弾が若松城へと降り注ぎ、30日間にも及ぶ激しい攻防戦に終止符が打たれ、会津藩は降伏します。

 

この戦いでは白虎隊の少年たちが飯盛山で自刃するなど、悲話が現代にも伝えられています。当時の白虎隊は16、17歳の武家の男子によって構成され、中には13歳の少年もいたと言われます。郊外の飯盛山にあった白虎隊二番隊の少年たちは、城下の火災を若松城の落城と誤認して自刃を選択、19名の命が失われました。時を経た今、飯盛山の麓にある墓地には自刃した少年たちの墓が並んでいます。

 

会津藩の藩祖であった保科正之は3代将軍、徳川家光の庶弟で、家光と4代将軍の家綱を輔佐し、幕閣に重きを成しました。正之は会津藩においても「会津家訓十五箇条」を定め、その第一条に「会津藩は将軍家を守護すべき存在である」と記し、以降の会津藩はそれを忠実に守り続けました。また、正之は朱子学を藩学とし、尚武の藩風を作り上げます。松平容保をはじめ、幕末の会津藩が旧幕府勢力の中枢として最後まで戦い抜いた原点が、そこにありました。

 

若松城の天守と走長屋

※写真は若松城の天守と走長屋

 

堅固な縄張りと華麗な天守、会津若松城の見所を知る

 

若松城は濠に囲まれた本丸郭(くるわ)を中心に、東に内濠を隔てて二ノ丸、三ノ丸があり、北には北出丸、西に西出丸があります。本丸の三方をそれぞれ二の丸、北出丸、西出丸の馬出状の郭で防御するという特徴的な縄張りになっています。また、巨大な追手門跡には大腰掛の石垣などの防御システムが残されています。会津戦争の際にはここで新政府軍を阻止したと言われています。

 

土橋を渡って本丸郭へと入ると、太鼓門の枡形を経て郭の中央に天守が聳えます。天守からは長さ78mもの走長屋が伸びて本丸と帯郭を区分します。この走長屋と干飯櫓は平成13年(2001年)に、江戸時代の工法を用いて復元されています。そして高さ36mの天守は昭和40年(1965年)に復元されたもので、内部は郷土博物館としても公開されています。

 

そして鉄門(くろがねもん)から本丸へと入ると、目の前には本丸御殿跡が広がります。その奥には茶室、「麟閣(県指定重要文化財)」があり、千利休の子である少庵が建てた茶室とされ、庭園を眺めながらお茶を楽しむ事ができます。城跡は国の史跡にも指定され、今は「鶴ヶ城公園」となっています。

 

鉄板で覆われた鉄門と天守

※写真は鉄板で覆われた鉄門(くろがねもん)と天守

 

藩主庭園や家老屋敷、会津戦争の史跡など見所は多彩

 

城下には歴代藩主たちが愛した「御薬園(会津松平氏庭園、国指定名勝)」もあります。霊泉が湧く心字池を中心とした回遊式の山水庭園で、楽寿亭や御茶屋御殿などの建物があり、四季折々の風情を楽しむ事ができます。また、東山には会津藩家老、西郷頼母の屋敷などを復元した「会津武家屋敷」の姿も。当時の広大な家老屋敷が再現され、敷地内には会津歴史資料館なども併設されています。

 

加えて城下の北東、飯盛山の麓には白虎隊十九士の墓が、そして近くには会津戦争の際に本営となった「旧滝沢本陣(国指定史跡、国指定重要文化財)」などもあり、城下の見所は多彩です。

 

9月に開催される会津まつりの風景

※写真は会津まつりの風景。9月に開催される「会津まつり」では、総勢約500人もの会津藩公行列が城下を練り歩きます

 

今回ご紹介した福島県会津若松市の旅行スポット

 

名称:会津若松城(鶴ヶ城)
住所:会津若松市追手町1-1
天守入場料:大人 410円(麟閣共通券510円)、小人 150円
開館時間:8:30~17:00(入場は30分前まで)
アクセス:JR会津若松駅から路線バスで「鶴ヶ城西口」へ。徒歩約5分
駐車場:専用駐車場あり(有料)
参考リンク:会津若松観光ビューロー「鶴ヶ城」

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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