宿場の風情を今に伝える大内宿、南会津の山間で美しい茅葺き民家に出会い高遠そばを食す旅
南会津の山あい、福島県南会津郡に佇む「大内宿」。ここはかつて江戸へ向かう旅人や、参勤交代の行列で賑わった会津西街道の宿場町です。旧街道の両脇には現在も茅葺きの民家が多く建ち並び、訪れる観光客で賑わうスポットとなっています。今回は江戸時代の風情をそのままに残す、大内宿の宿場町を訪れる旅へとご案内します。
※写真は南会津の山あいに佇む大内宿の風景
江戸時代の宿場町の景観と様子を今に伝え続ける「大内宿」
福島県南会津郡下郷町にある「大内宿」は、旧会津西街道の宿場町です。ここは半農半宿の宿場とされ、南会津の山々に囲まれた小盆地の中に、風情溢れる景観が広がっているスポットです。現在も江戸時代の宿場町の雰囲気をよく残していて、重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。
全長450mの旧往還の両側には、30軒以上の茅葺き寄棟造りの民家が並びます。今ではこの風情溢れる景観が人気を呼び、年間で100万以上の人々が訪れる場所になっています。ここ大内宿の民家には民宿や民芸品店、土産物屋、蕎麦屋などがあり、当時の生活を再現し、復元されている旧本陣の方は「大内宿町並み展示館」として、江戸時代の宿場文化を伝え続けています。
※写真は情緒溢れる旧往還
ここは取り残されたような異空間。大内宿の繁栄と衰退を知るストーリー
大内宿は会津と日光を結ぶ旧会津西街道(下野街道)の宿場として、江戸時代の初めに開かれました。この会津西街道は会津若松を発し、福永宿、関山宿を経て南会津の山間に入り、氷玉峠、大内峠を越えて1,000m級の山々に囲まれた大内の盆地へと入ります。この大内宿はその小盆地の北端に佇んでいます。
会津若松から5里の距離にある大内宿は、重要な宿駅として本陣や脇本陣が置かれました。そして江戸や日光へ向かう旅人、参勤交代の行列などで賑わい、迴米(かいまい:遠隔地に回送する米穀)の集散地ともされて繁栄します。しかし、後に会津藩の参勤交代が白河街道を通るようになり、さらに会津中街道が新しく通じたこともあって、会津西街道は段々と廃れ、次第に大内宿は半農半宿の様相となっていきました。
そして明治維新に至る会津戦争(戊辰戦争)で、会津周辺の土地は戦場となってしまいますが、当時の大内宿は主要街道でなかったために戦禍を逃れ、明治時代の地方道路行政においても、大内宿はまるで異空間のように時代に取り残されていきました。
※土の道へと戻され、江戸時代の姿を取り戻した大内宿
南会津の山深い地で近代化から取り残され、江戸時代そのままの姿を保つ事になった大内宿は、昭和56年(1981年)に国の重要伝統的建造物群保存地区へと選定されました。それによって電柱が移設され、舗装も剥がして土の道に戻すなどの整備が行われ、平成4年になってからは「美しい日本のむら景観コンテスト」を受賞、その後は「美しい日本の歩きたくなるみち500選」などにも選定されました。そんな経緯を経て観光客数は100万人を超え、福島県の中でも有数の観光スポットになっていきました。
日本の暮らしの原風景が残る大内宿の歩き方
大内宿を訪れた際は江戸時代の旅人気分になって楽しむのがおすすめです。情緒溢れる旧往還を歩くだけでも癒されますし、のどかな山里の景色、宿場町の店先で焼かれる餅、店の前の小さな流れで冷やされているラムネなど、とてもスローな時代の時間が流れています。
※写真は名物の高遠そば。箸の代わりにネギで頂くそばとなっています
また、名物になっている「高遠そば」や「烏骨鶏ごはん」、「岩魚(いわな)の骨酒」に「栃餅(とちもち)」など、築300年の座敷や囲炉裏端で味わう素朴な郷土料理の数々は、ぜひ味わっておきたいところです。かつての旅籠を再現した民宿もあるため、ここに泊まればまさに江戸時代の旅人気分に浸れてしまいます。
大内宿では年間を通じてイベントも行われています。例えば街道沿いに雪灯籠が並ぶ2月の「大内宿雪祭り」、そして宿場内28基の放水銃で空に一斉放水を行う9月の「防災訓練」などのイベントはよく知られています。周辺には奇岩が連なっている渓谷、天然記念物の「塔のへつり」や、阿賀川沿いの「湯野上温泉」「芦ノ牧温泉」などの人気のスポットも散在しています。
※写真は茅葺きの店の軒先
今回ご紹介した福島県南会津郡の旅行スポット
名称:大内宿
住所:福島県南会津郡下郷町大内
アクセス:東北新幹線「新白河」及び、JR只見線「会津若松」から福島交通観光路線バスで「大内宿」(4月~11月の土日祝日に運行)
参考リンク:大内宿観光協会公式サイト
名称:大内宿町並み展示館
住所:福島県南会津郡下郷町大内字山本
開門時間:9:00~16:30
入場料金:大人250円、子供150円
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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