天空の宗教都市吉野山、金峯山寺で日本史を彩る伝説、史跡を楽しむ歴史旅
記事公開日:2015/10/26
吉野山は金峯山上につくられた修験道の聖地であり、古くから信仰と歴史が交錯する地です。源義経と静御前の伝説、南朝ゆかりの史跡、西行や芭蕉の古跡など、ロマン溢れる伝説や史跡にスポットをあてた歴史旅をご紹介していきます。

世界遺産にも登録された修験道の聖地「吉野山」
吉野山は奈良盆地の南、大峰連山より延びる尾根、金峯山上につくられた宗教都市。古くは役小角(えんのおづぬ)によって開かれた修験道の聖地で、修験本宗の総本山、金峯山寺を中心とした寺院、古社が散在しています。また、桜の名所としても名高く、離宮が設けられ、皇族や貴族が盛んに参詣して隆盛を極めました。吉野山は紀伊山地の北端、大峰を経て熊野三山へと続く大峯奥駈道の基点でもあり、2004年に高野山、熊野と共に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
修験本宗の総本山、「金峯山寺」は吉野山のシンボル的存在
7世紀、修験道の開祖、役小角(えんのおづぬ)は大峰山で修行を重ね、金剛蔵王大権現を感得し、「金峯山寺」や「大峯奥駈道」を開いたとされます。そしてこの金峯山寺は修験道の総本山であり、本尊は3体の巨大な蔵王権現、火炎を背に頭髪を逆立てた忿怒の相であり、神仏習合の独自の尊格で秘仏とされています。

※写真は金峯山寺で行われる花供懺法会式。先達に率いられた多くの修験者が各地から集まります。
見所が散在する天空の宗教都市、吉野山の歩き方
吉野山は「下千本」から始まります。ロープウェイの駅からすぐに黒門、そして旅館、土産品店が軒を連ねる坂に銅の鳥居。その先には国宝の「仁王門」、奥の高台には「蔵王堂」が巨大な躯体を誇るようにそびえます。さらに蔵王堂の先には「勝手神社」や芭蕉が滞在した「東南院」、「喜蔵院」などの名宿坊があり、左手の尾根には「吉水神社」が鎮座します。

※写真は蔵王堂
また、中千本には大海人皇子の勅願寺である「桜本坊」や、聖徳太子創建とされる「竹林院」も。左手の峰には後醍醐天皇に纏わる「如意輪寺」と「塔尾陵」があります。加えて上方、上千本には「吉野水分神社」が鎮座。上千本へは中千本からシャトルバスで登り、下りは眺望のよい尾根道を徒歩で下ります。最奥の奥千本には「金峯神社」や「西行庵」があります。

※写真は桜の季節、朝靄の吉野山
千数百年の歴史の中、信仰と文化が交錯する吉野山
古代最大の内乱、壬申の乱では大海人皇子(天武天皇)がこの地に隠棲し、後に挙兵します。鎌倉期には兄、頼朝と対立した源義経郎党と静御前がこの山に身を隠します。また、鎌倉後期には護良親王がこの山で倒幕の兵を挙げ、南北朝期には、後醍醐天皇の南朝が置かれるなど、吉野山は常に劣勢が拠る、日本史上の対極の地でした。

また、万葉集には吉野山を詠ったものが百首近くあるといわれ、柿本人麻呂、山部赤人、大伴家持など、多く歌人が吉野山を題材としています。さらに中世の歌人、西行はこの山で三年に亘って暮らし、江戸期には松尾芭蕉が西行の足跡を辿るように、二度ほど訪れて多くの歌を残し、その句碑が吉野山の各所にあります。

※写真は中千本。この山の桜は殆どが桜の原種である白山桜
山下から山上へ、見頃を長く楽しめる吉野山の桜
「日本一の桜の名所」と言われる吉野山は、下千本、中千本、上千本、奥千本と標高300mから800mまで、3万本の桜が花期をずらして咲き上り、まさに錦(にしき)の景観となります。桜のシーズンには夜間ライトアップも行われ、大いに賑わうスポットとなっています。ちなみに桜の開花状況は、吉野町HP「観桜期情報(お花見情報)」でチェックする事もできます。尚、シーズン中には交通規制が行われ、郊外に駐車場も設けられ、吉野山までのシャトルバスも運行されます。
今回ご紹介した歴史スポット
名称:金峯山修験本宗 総本山金峯山寺
住所:奈良県吉野郡吉野町吉野山
アクセス:近鉄吉野線「吉野駅」からロープウェイ5分、徒歩10分
駐車場:下千本無料駐車場(桜のシーズン中は事前確認がお薦め)
参考情報:金峯山寺の公式サイト
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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