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小説「天平の甍」で描かれた唐招提寺と鑑真、奈良で貴重な文化財とストーリーを知る旅

記事公開日:2017/07/24

奈良県奈良市にある「唐招提寺」は、唐僧であった鑑真が苦難の末に渡日し、戒律を学ぶ僧の教学の場、戒院として創建したと言われる寺院です。そしてここには「天平文化の粋」とも言われる伽藍や仏像群の数々が収蔵され、その多くが国宝や重要文化財となっています。今回は世界遺産にも登録されている奈良県の唐招提寺で、鑑真和上の思いと天平の美を知る旅へとご案内します。

唐招提寺の境内に佇んでいる金堂の風景

※写真は緑豊かな唐招提寺の境内に佇んでいる金堂の風景

 

天平文化の最高峰と言われる文化財が残り、世界遺産にもなった唐招提寺

 

奈良県奈良市五条町にある「唐招提寺(とうしょうだいじ)」。ここは奈良時代に聖武天皇の招きに応じ、苦難の末に渡日したと言われる唐僧、「鑑真(がんじん)」によって建立された、律宗の総本山となっている寺院です。唐招提寺には天平文化の最高峰とも言われる国宝や重要文化財の伽藍、仏像群が数多く収蔵され、時を越えて多くの人々に影響を与えています。そんな唐招提寺は「古都奈良の文化財」の構成寺院として、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

 

美しいフォルムの屋根を持つ「金堂(国宝)」は天平文化の粋ともされ、その佇まいは荘厳。また、金堂の堂内には盧舎那仏坐像と千手観音立像、薬師如来立像は国宝仏3体が配され、御影堂に配された「鑑真和上像(国宝)」は日本最古の肖像彫刻ともされ、フランスのパリや鑑真の故郷、中国の揚州でも公開されました。

 

唐招提寺の講堂の大屋根

※写真は唐招提寺の講堂の大屋根

 

日本仏教の礎を築いた鑑真と唐招提寺のストーリー

 

奈良時代において正式な僧侶となるためには、戒壇で授戒しなければなりませんでした。しかしその一方、当時の日本には授戒の制度が整備されていないという問題点がありました。そこで聖武天皇は、僧たちに戒律を授ける導師を唐から招請しようと考えます。

 

天平5年(733年)に聖武天皇の命を受けて唐へ渡った普照と栄叡は、揚州の大明寺において鑑真に出会います。そこで鑑真は日本への渡航を決意したものの、当時の渡海というのはまさに命懸け。この時は高名な僧であった鑑真の出国に反対する声も多く、鑑真の出国、渡日は難航したと言われます。

 

渡航を試みたある時は普照と栄叡が捕縛されてしまい、またある時は船が難破。さらに748年の渡航では嵐で船が漂流し、中国最南端の島である海南島に漂着してしまいます。加えて栄叡は病死、そして鑑真は失明するという苦難にも陥りました。これらの苦難を経てようやく、753年に6度目の渡航で鑑真は渡日に成功します。

 

日本に来てからの鑑真は東大寺に5年住んだ後、天平宝字3年(759年)に唐招提寺の地を与えられます。そして大僧都に任じられた鑑真は教学の場、戒院としての唐招提寺を創建しました。これらの逸話は映画にもなった井上靖の小説「天平の甍(いらか)」で知られる、鑑真和上と唐招提寺の歴史ストーリーです。

 

正面から望む唐招提寺の金堂

※写真は正面から望む唐招提寺の金堂

 

貴重な文化財の数々が残る、唐招提寺の見所を知る

 

唐招提寺の南大門を入り、境内の正面に見えるのが「金堂(国宝)」。この金堂は唯一奈良時代から現存するものであり、寄棟造りの正面には8本の太い円柱が並び、美しいフォルムの屋根には鴟尾(しび:魚の尾をかたどったと言われる飾り)が輝いています。

 

また、堂内には大きな須弥壇(しゅみだん:仏像等を安置するために一段高く設けたれた壇)があり、中央には本尊の廬舎那仏坐像、左右には千手観音立像、薬師如来立像の3体を安置するほか、本尊の手前には梵天、帝釈天立像、須弥壇の四隅には四天王立像を安置しています(いずれも国宝)。

 

そして金堂の背後には「講堂(国宝)」が佇みますが、これは平城宮の東朝集殿を移築したと言われ、奈良時代の宮廷建築としては極めて貴重なものとされています。こちらの堂内にも本尊の弥勒如来坐像と持国天、増長天立像(ともに重文)が安置されています。

 

尚、金堂と講堂の間には「鼓楼(国宝)」と「鐘楼」があり、講堂の右手には「東室、礼堂(重文)」、その後方には奈良時代の校倉造の倉庫「宝蔵」「経蔵」(ともに国宝)が佇んでいます。

 

境内の奥にある「御影堂(重文)」では日本最古の肖像彫刻とされる「鑑真和上坐像(国宝)」が安置され、障壁画は日本画家の東山魁夷によって描かれたものとなっています。その御影堂の右奥には「鑑真廟」が広がり、唐招提寺の境内全域が国の史跡に指定されています。

 

境内の西側にある戒壇

※写真は境内の西側にある戒壇。戒壇院は江戸時代に焼失しましたが、残された3段の石壇に宝塔が置かれています

 

今回ご紹介した奈良県奈良市の旅行スポット

 

名称:唐招提寺
住所:奈良県奈良市五条町13-46
アクセス:近鉄橿原線「西ノ京駅」徒歩8分
拝観時間:8:30~16:30
拝観料:大人600円 高・中学生400円 小学生200円
駐車場:専用駐車場あり(有料)
参考リンク:唐招提寺公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

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