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薬師寺、国宝の薬師三尊像を体感しシルクロード文化と東洋美術の粋を知る旅

記事公開日:2017/06/19

飛鳥時代と奈良時代の間、白鳳文化の時代に創建された奈良、西ノ京の「薬師寺」。金堂と講堂を中心に2つの塔を配する独特の伽藍、そしてギリシャやペルシャ、インドなどの影響が見られる本尊の薬師三尊像。ここに来れば奈良がシルクロードの終着地と言われる所以を感じる事ができます。今回は世界遺産にも登録されている薬師寺の地において、最高峰の日本仏教美術の粋を体感する旅へとご案内します。

薬師寺の伽藍に聳える西塔の姿

※写真は薬師寺。伽藍に聳える西塔の姿

 

独特の伽藍配置、薬師寺で日本仏教彫刻の最高峰とされる仏像群に出会う

 

奈良市、西ノ京にある「薬師寺(やくしじ)」は法相宗の大本山。ここは南都七大寺の1つにも数えられ、創建は天武天皇9年(680年)、開基は天武天皇、道昭、義淵とされています。この寺は金堂、講堂を中心に、東塔と西塔の2つの塔を左右に配する独特の構成となっていて、薬師寺式伽藍とも呼ばれています。また、境内の東塔や東院堂、本尊の薬師三尊像などは国宝とされていて、1998年には古都奈良の文化財の一部として、ユネスコの世界遺産にも登録されました。

 

そして金堂に安置され、薬師如来の左右に日光菩薩と月光菩薩を配する本尊の「薬師三尊像」は、飛鳥時代後期から奈良時代頃の作と言われ、日本仏教彫刻の最高傑作の1つとされています。この薬師三尊像には古代インドの彫刻様式や中国、初唐様式の影響が見られ、ギリシャ、ペルシャ、インドなどに由来する意匠が表わされて、「シルクロード美術の結晶」とも言われています。

 

薬師三尊像を安置する金堂

※写真は薬師三尊像を安置する金堂

 

白鳳伽藍の復興を目指した再建。薬師寺にまつわる歴史ストーリー

 

日本書紀によると、薬師寺は天武天皇9年(680年)に、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を願い、藤原京(奈良県橿原市)の地に建立を始めたとされています。しかし、天武天皇は寺の完成を見ずに没してしまい、伽藍の建立は持統天皇、文武天皇へと引き継がれました。

 

そして、和銅3年(710年)の平城京への遷都によって、薬師寺は現在地となる西ノ京へ移転。その後の薬師寺は天禄4年(973年)の火災や、戦国期の享禄元年(1528年)の兵火によって殆どの建造物を失う事となってしまいます。これらの結果、1950年代までの薬師寺は、奈良時代に建てられた東塔と江戸時代後期の仮再建による金堂、講堂が建つだけの寂しいものだったと言います。しかし、1960年代に入ってようやく、管長となった高田好胤氏が写経勧進による白鳳伽藍の復興を目指し、以降1976年の金堂再建をはじめ、西塔、中門、回廊、大講堂などが次々と再建され、現在も白鳳伽藍の復興が行われています。

 

再建された薬師寺の大講堂

※写真は再建された薬師寺の大講堂

 

薬師寺式伽藍と白鳳の美、国宝仏像群の鑑賞ポイントを知る

 

回廊に囲まれた伽藍の内には、左右2つの塔が建ちます。右手の「東塔(国宝)」は奈良時代(天平年間)に遡る唯一の建造物で、屋根が6つあるため六重の塔にも見えますが、小さな屋根は裳階(もこし)となっていて、構造的には三重の塔。これは仏塔建築としては他に類のない構造とされます。また、東塔と対称に建つ左手の「西塔」は、1981年に伝統技法によって再建されたものです。

 

また、伽藍中央の「金堂」は1976年に再建されたもの。ここには薬師寺の本尊である薬師三尊像が安置されています。日本仏教彫刻の最高傑作の1つとされる「薬師三尊像(国宝)」は、飛鳥時代後期(白鳳期)から奈良時代(7、8世紀)の作とされ、中尊の薬師如来の台座にはギリシャ、ペルシャ、インド、中国などに由来する葡萄(ぶどう)唐草文、人物像、四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)などが表わされ、奈良がシルクロードの終着地といわれる所以とされます。

 

さらに金堂の後方にある「大講堂」は2003年に再建されたもの。ここは薬師寺最大の建造物であり、本尊の「銅造三尊像(重文)」は高さが2,67mにもなる大作です。そしてもう1つ、回廊の外、境内東側にある「東院堂(国宝)」は鎌倉時代、弘安8年(1285年)の建築とされ、本尊の「聖観音立像(国宝)」は日本屈指の美しい観音像と言われ、薄い衣の襞の下から足が透けて見える意匠などは、インドのグプタ朝の影響を受けたものとされます。

 

さらにさらに境内の北の「玄奘三蔵院」は1991年に建立されたもの。この「玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)」とは西遊記の三蔵法師のことで、17年間に亘ってインドで学び、法相宗はその教えを継承するものとなっています。ここには日本画家の平山郁夫が30年をかけて制作した、長さ49mの「大唐西域壁画」もあり、必見の価値がある作品となっています。

 

美しい姿をみせる西塔と回廊

※写真は美しい姿をみせる西塔と回廊

 

今回ご紹介した奈良県奈良市の旅行スポット

 

名称:薬師寺
住所:奈良県奈良市西ノ京町457
アクセス:近鉄橿原線「西ノ京駅」そば
拝観時間:8:30~16:30
拝観料:(玄奘三蔵院公開時)大人1,100円、中高生700円、小人300円、(玄奘三蔵院閉鎖時)大人800円、中高生500円、小人200円
駐車場:専用駐車場あり(有料)
参考リンク:薬師寺公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

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