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淡路島・東山寺、人里離れた山奥で維新の志士たちの痕跡と仏像を受け継ぐ歴史を知る旅

記事公開日:2016/12/12

淡路島の中部に佇む尼寺、「東山寺(とうさんじ)」。ここは弘法大師が開いたという古刹であり、人里離れた山奥で紅葉の美しさでも知られる名所です。また、この尼寺は明治維新の志士の潜伏を助け、その縁で危機に瀕した京都・石清水八幡宮の仏像を密かに受け継いだ寺でもありました。今回はそんな秘話が伝わる淡路島・東山寺を巡る旅をご紹介していきたいと思います。

淡路島にある東山寺の本堂

※写真は淡路島にある東山寺の本堂

 

弘法大師が開いたと伝わる古刹「東山寺」

 

東山寺は弘仁10年(819年)、嵯峨天皇の時代に弘法大師が淡路市多賀の伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)を鎮護する寺として開祖したと言われる古刹です。ここは奥の院に伽藍が並ぶ中本山としての格式を伝えますが、その後の戦乱で寺は焼失し、鎌倉時代後期の弘安8年(1286年)に再興されたと言われます。

 

室町時代からの山門

※写真は室町時代からの山門

 

淡路島最古の本堂と山門は、室町時代の守護職・細川家による寄進

 

寺の再建後は寺領600石を誇り、寺坊36・末寺17に多くの僧兵を抱える本山として栄えます。現在まで残る本堂や山門は、室町時代の養宜(やぎ)館主・淡路守護職の細川家の寄進とされ、淡路島最古の木造建造物と言われています。

 

東山寺の境内(全景)

 

東山寺の再興に取り組んだ尼僧「佐伯心随」

 

そして戦国時代に入ると、淡路島は水軍を擁する安宅(あたぎ)氏が支配しますが、戦乱の中で羽柴秀吉らに攻められて最終的には滅亡。また、江戸時代には蜂須賀氏が徳島藩の領地としますが、檀家がない東山寺は次第に廃寺同然にまで衰退していってしまいます。

 

そんな時に現れたのが讃岐出身の「佐伯トミ」という女性で、ある時彼女の夢枕に弘法大師が現われ、東山寺の復興を託したと言われます。そして啓示を受けたトミは落髪し、尼僧「佐伯心随」となってこの地に入り、東山寺の再興に向けて心血を注ぎます。

 

本堂の内部

 

幕末には勤王の志士たちの潜伏場所となった寺

 

そして幕末の時代には、勤王の志士たちが幕府の厳しい目から逃れるために、この淡路島の人里離れた寺が格好の場所となりました。この東山寺で密会して謀議を重ねた志士たちを、尼僧となった心随尼は匿って世話をしたと言います。ここには学者であった頼山陽の三男「頼三樹三郎」や、淡路出身の「伊藤聴秋」、そしてその師の「梁川星厳」などが潜伏したとされ、当時血気盛んであった志士たちの刀痕が、寺内の座敷の鴨居に残されているそうです。

 

そして安政の大獄が吹き荒れる最中には、志士たちの願いを受けた心随尼が京都・石清水八幡宮護国寺の道基上人の元へ、密書を届ける役割も担ったと言われます。

 

人里離れた山奥に佇む境内

 

救われた石清水八幡宮護国寺の薬師如来像と十二神将像

 

その後、江戸幕府が大政奉還して明治時代へと移ると、全国に廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、仏教施設や仏像などが次々と破壊されていきます。これは京都・石清水八幡宮護国寺であっても同様で、本尊とされる平安時代の「薬師如来像」や、大宰府の仏師「真快」作の「十二神将像」といった貴重な仏像類が、近くの男山に打ち捨てられてしまいます。これに対して石清水八幡宮護国寺の道基上人は心を痛め、ある行動を決断します。

 

東山寺の薬師堂

※写真は薬師堂

 

道基上人は思い悩んだ末、淡路島の山奥で東山寺の復興に尽力している佐伯心随尼に仏像類を託し、後世へと残していこうと決意。明治2年(1869年)に人目を避けて仏像が運び出され、山道を背負ってこの東山寺へと持ち込まれたと言います。現在東山寺の重要文化財となっている薬師如来像と十二神将像は、本堂横の薬師堂に安座され、大切に守り継がれています。

 

東山寺に伝わる「三十五日の山参り」を知る

 

その他にも淡路島には、亡くなった人が無事に極楽浄土へ行けるようにとの願いを込めた、「山参り」という風習が残されているのをご存知でしょうか?これは古くから伝わる説話であり、かつて放送されていた「まんが日本昔ばなし」の中でも出てきた話です。

 

ある時亡くなってしまった父親が、極楽浄土を目指して歩いて行くものの、途中で恐ろしい餓鬼が襲ってきて行き着けないと、自らの息子の枕元で訴えます。そして父親は東山寺の裏山が、あの世とこの世が通じる場所であると伝え、裏山からおにぎりを転がして欲しいと息子に伝えました。それから息子が東山寺の裏山で、言われた通りにおにぎりを転がすと、餓鬼たちがおにぎりを奪いあい、父親はその間にうまくすり抜けて、無事に極楽へ行くことができたという話です。淡路島では今でも、三十五日法要の後に「山参り」に纏わる供養を行う所もあるのだそうです。

 

【参考リンク】まんが日本昔ばなしデータベース

 

美しい紅葉で赤く染まる東山寺

 

淡路島唯一の尼寺「東山寺」。この寺の近くにはバスなども通っておらず、仮に車で行くとしても細い山道を抜けていく事になります。しかしここは紅葉が美しいスポットとしても知られ、とても静かで心安らぐ場所でもあります。歴史の表舞台に登場するほどの寺ではありませんが、知る人だけが知る穴場スポットとなっています。

 

今回ご紹介した兵庫県淡路市の旅行スポット

 

名称:平生山 東山寺
住所:兵庫県淡路市長澤1389
アクセス:神戸淡路鳴門自動車道「北淡IC」から車で約30分

 

播磨翁播磨翁

兵庫県の播磨国に在住。ワクワク出来る歴史旅をご紹介できれば幸いです。個人的には謎がありそうなディープな歴史が好きです。

 

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