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圧倒的スケールの大阪城、豊臣・徳川・大阪市民、落城しては再生した城の歴史を知る旅

記事公開日:2016/11/14

豊臣秀吉が天下統一の拠点として築いたという「大阪城」。この巨大な惣構えは当時の城郭の常識を覆す規模でした。そして豊臣時代、徳川時代を経た400年後の現在は、3代目となる天守が大阪の街の中心にそびえています。日本の歴史において天下を動かしてきた圧倒的なスケールの大阪城には、今も天下人たちの威信をかけた築城の歴史が伝えられていました。

現在の大阪城の天守閣


秀吉がこの地を選んで築城した大坂城の時代

 

天文2年(1533年)、この地は織田信長と一向宗との激戦が繰り広げられていた場所で、11年にわたって激戦を耐え抜いた石山本願寺城は「摂州第一の名城」と言われました。この時の織田信長も、「大坂はおよそ日本一の境地なり(信長公記)」とこの立地の良さを賞賛しているほどです。

 

そしてそんな信長の後を継いだのが豊臣秀吉。秀吉は天正11年(1583年)にこの石山本願寺の跡地で大坂城の普請に取り掛かります。古来から半島のように付き出た上町台地の守りと、瀬戸内海と京都を結ぶ水運の要地、そして五畿内の中央にあるという地の利に長けたこの地を秀吉は選んだのです。

 

大阪城内に残る石山本願寺跡地(推定)の碑

※大阪城内に残る石山本願寺跡地(推定)の碑

 

秀吉時代の大坂城は現在の大阪城公園域を東北角にし、西の端は東横堀川あたり、そして南の端は玉造本町付近で現状の約4倍、約400万平方メートルもの広い地域にありました。普請を開始してからは約1.5年で5層の天守が完成、そして関白に就任した秀吉は絶頂期を迎え、さらに第二・三期工事を経て慶長3年(1598年)に壮大な惣構が完成します。その後もさらに武家屋敷の整備といった第四期の工事が命じられましたが、肝心の秀吉が8月に没してしまいました。

 

その後は家督を継いだ豊臣秀頼が、秀吉の遺命によって大坂城に入ります。しかし、関が原の戦いを経た慶長20年(1615年)、大坂夏の陣で徳川方に攻めこまれ、5月7日の深夜に内通者の放った火によって天守が炎に包まれ、秀頼が自刃して豊臣宗家は滅亡。秀吉の築いた天守は築城から31年目で焼け落ちてしまいました。

 

大坂夏の陣図屏風(大坂城部分)

 

徳川秀忠が再築した大坂城の時代

 

徳川家康の天下統一後、2代将軍の秀忠は元和6年(1620年)に大坂城の再築に取りかかります。その際、秀忠は普請奉行の藤堂高虎に、石垣も堀も秀吉の城の倍にするように命じたと言われます。その工事は諸大名65家を動員する天下普請で、秀吉の城を完全に埋めてしまい、その上に新たな城を造り上げるという徹底ぶりでした。この時の3期に渡る大工事で寛永6年(1629)には再び大坂城が完成します。しかし、その時の大坂城は豊臣家の威光を消し去り、徳川時代の権威を世に示すものでした。

 

豊臣時代と徳川時代の大坂城天守閣の違い

※写真は豊臣時代と徳川時代の大坂城天守閣の違い。上に盛り土をし、その上に1.5倍の高さの徳川天守を築きました

 

大坂城は日本最大の城郭を誇った

 

徳川期の大坂城の石垣は総延長が約12km、推定で50万個以上の石を使ったとされ、最も高い本丸東側の石垣は根石から32m、水面上でも24mの高さを誇りました。また、堀幅も南外堀の最大幅は75m、西外堀は最大125mにもなる、日本最大を誇る城郭でした。

 

東内堀の日本最大規模の石垣

※写真は東内堀の日本最大規模の石垣

 

残されている大坂城、桜門の巨石「蛸石」

 

桜門の「蛸石」

 

大坂城南側の「桜門」には日本最大の鏡石があります。表面積で36畳敷き(59.43平方メートル)、重量は約108トン。左下には「蛸」のような模様があり、通称「蛸石」と呼ばれています。高さは5mを越えていますが、奥行きに関しては意外と薄く、化粧板の石のように使われたと言われます。

 

蛸石の上部

※写真は蛸石の上部。厚さは1m以下と薄いが、逆に薄く切り出す事ができた当時の技術にも驚かされます

 

徳川時代にも再び天守が焼失、徳川幕府の終焉とともに大坂城も再び落城

 

莫大な資金と人員を投じて完成させた徳川時代の大坂城ですが、3代将軍の徳川家光の以降、14代の家茂に至るまでの約230年間、歴代の将軍は誰も入城しませんでした。また、竣工から僅か39年目の寛文5年(1665年)には、落雷によって天守を焼失してしまい、その後の266年間は天守を欠いたままとなりました。

 

そして徳川幕府最後の将軍、15代慶喜は、幕末の鳥羽伏見の戦いで江戸へと退却。その混乱の中で本丸から出火し、城内の建造物は殆ど焼失してしまいます。この時の徳川幕府の終焉と共に、大坂城も再び落城してしまったのです。

 

そして大阪の人たちの寄付によって、現存の3代目天守が完成する

 

明治時代以降の「大阪城跡」は軍用地として使われましたが、昭和3年には大阪市が天守復興を提言します。そしてこの時は7万8千人余りの一般からの寄付によって、僅か半年ほどで150万円(現在の600~700億円)が集まり、昭和6年(1931年)には3代目の天守が完成しました。

 

大阪城天守の入り口には「秀吉の天守が31年、徳川の天守は40年、3代目の天守は最長記録を更新中」という内容が掲示されています。尚、この昭和の天守は秀吉時代の天守を模したコンクリート造りの「復興天守」であり、さらに徳川時代の天守台の上に秀吉の天守を築造してあるため、賛否もあります。しかし、秀吉時代のものが既に土の下に埋もれていると判明したのが33年も後のことだったため、記録がほとんど無い当時としてはやむを得ないことでした。

 

堀の向こうに見える大阪城の天守閣

 

今では年間約230万人もの人々が訪れている大阪城

 

大坂の陣や鳥羽伏見の戦いなど、日本全体の歴史を動かすような戦いの中で、何度も焼け落ち、一度も勝利したことが無い大阪城。しかし、この大阪城には今や年間約230万人(2015年)もの人々が訪れています。

 

そんな大阪城では今、「豊臣石垣公開プロジェクト」が進められています。これは昭和59年(1984年)に天守近くで発見された初代石垣を、発掘された地下のままで史跡として公開するものです。「日本の歴史がダイナミックに転換した激動の時代を体感して欲しい」とありました。

 

最後に改めて天守の最上階へと上がってみると、広い本丸の外に大阪市内が一望できました。ここは天下人の権力を誇るために造られ、天下人の威信で壊されてしまった大阪城。歴史の大きな流れと、そこにいた熱い人々の想いを感じ取る事ができる貴重な場所なのかもしれません。

 

天守閣から大阪市内を一望する

 

※本文内容は江戸時代以前を「大坂城」、明治維新後を「大阪城」と表記しました。

 

今回訪れた大阪府大阪市の旅行スポット

 

名称:大阪城
住所:大阪市中央区大阪城1-1
アクセス:JR大阪環境線「大阪城公園駅」からすぐ
駐車場:大阪城周辺に有料駐車場が複数あり
参考情報:大阪城天守閣公式サイト

 

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