世界自然遺産の白神山地、ブナ原生林のパワーに癒され、コバルトブルーの青池の神秘を知る旅
青森県と秋田県にまたがる「白神山地」。ここには1,000m級の山々が連なり、未だ人の影響を受けていないブナの原生林が広がっています。平成5年(1993年)には屋久島と共に日本初のユネスコ世界自然遺産にも登録され、改めてその価値にも注目が集まるようになりました。今回は木々のパワーと水の浄化エネルギー溢れる白神山地を巡り、コバルトブルーの神秘的な湖「青池」の存在を知る旅へとご案内します。
※写真は白神山地のブナ原生林
白神山地のブナ原生林は、豊かな生態系を育くむ母なる森
青森県と秋田県の県境に広がる「白神山地(しらかみさんち)」には、未だ人の手が加えられていないブナの森が世界最大級の規模で広がっています。高さ30m以上にもなる落葉広葉樹、その美しい姿は「森の女王」とも呼ばれます。この森の中にある栄養素豊富な実は動物たちの餌になり、豊かな生態系を育んでいるブナの原生林は、「母なる森」とも呼ばれています。
この白神山地のブナ原生林には、若々しい樹林帯から樹齢数百年レベルの巨木群、そして朽ち果てた倒木など、ブナの森のあらゆる生態が見られ、クマゲラやイヌワシなどの希少種が生息する生態系が今も保たれています。人の影響を受けず、自然のままの生態系が保たれている広大なブナ原生林は世界でも評価され、平成5年(1993年)に屋久島と共に日本初の世界自然遺産に登録されました。
※写真はブナの森の中に佇むニホンザル
木々のパワーと水の浄化エネルギー。自然の恩恵が溢れる白神山地
欧州では森は神聖な場所とされ、精霊がいて祝福を与えてくれるとされます。森は人間の世界に支配されない神秘の空間であり、そこには人知を超えたパワーが満ち溢れています。
木々からは「フィトンチッド」と呼ばれる、森の香りの成分が発せられていると言われます。このフィトンチッドには人の心をリラックスさせる効果もあると言われ、訪れる私たちに魂の安らぎを与えてくれます。白神山地のブナの森にはフィトンチッドやマイナスイオンが溢れ、私たちの身体が持つ自然治癒力を高め、回復力さえ与えてくれそうです。
また、ブナの森は水を大量に蓄える事から、「緑のダム」とも呼ばれます。ブナの森の地面に積もった落ち葉は、雪どけの水や降った雨水を蓄え、自然のろ過装置となって水を浄化してくれます。ブナの原生林は木々のパワーと水の浄化エネルギーが溢れる、人間にとっての究極的な癒しスポットなのです。
※写真は白神山地のブナの巨木
ブナの森の中に神秘的なコバルトブルーの湖、青森県深浦町の「青池」
そして白神山地の西端、青森県深浦町にある「十二湖」は、ブナの原生林の中に大小の湖が散在しているスポットです。特に「青池」はブナの森の中に神秘的なコバルトブルーの湖が佇み、映画「もののけ姫」のシシガミの森の池を彷彿とさせるような雰囲気で人気を呼んでいます。近隣にある「十二湖ビジターセンター」では、ジオラマで十二湖の自然や生態系を学ぶ事もできるようになっています。
※写真は神秘的なコバルトブルーが印象的な青池の風景
名称:十二湖ビジターセンター
住所:青森県西津軽郡深浦町松神山国有林内
アクセス:JR五能線「十二湖駅」から奥十二湖行きのバスで約10分(4~11月運行)、「十二湖ビジターセンター前」から徒歩すぐ
参考リンク:十二湖info
白神山地のトレッキングスポットは、青森県と秋田県に4箇所
現在、世界自然遺産の登録地域となっている場所への入山は厳しく規制されていますが、登録地域に隣接するトレッキングコースを巡る事で、白神山地のブナ原生林を体感できます。今のところ白神山地周辺では青森県に3箇所、そして秋田県に1箇所のトレッキングスポットが整備されている状況となっています。
ブナ原生林の自然が学べるスポット、白神山地ビジターセンター
白神山地の北部、青森県西目屋村には「白神山地ビジターセンター」という施設があります。ここはブナ原生林の自然を学ぶ場所になっていて、様々なイベントが開催され、トレッキングやバードウォッチングなどが楽しめるスポットとなっています。また、ここから津軽峠へと延びる白神ライン(県道28号線)の途中には「白神山地総合案内所(アクアグリーンビレッジANMON)」があり、ここを基点に周辺のブナの森をトレッキングするコースも人気です。
名称:白神山地ビジターセンター
住所:青森県中津軽郡西目屋村大字田代字神田61-1
アクセス:JR東北本線「弘前駅」からバスで約50分、「西目屋村役場」から徒歩約5分
参考リンク:白神山地ビジターセンター
青森県鰺ヶ沢町には2、3時間で楽しめるガイドツアーやトレッキングの拠点も
JR五能線の鰺ヶ沢駅から車で30分ほどの山間には、総合案内休憩所「くろもり館」もあります。ここはブナ原生林のトレッキングコース「白神の森 遊山道(ミニ白神)」の拠点であり、2、3時間でブナの森を満喫できるいくつかのトレッキングコースやガイドツアーが人気を呼んでいます。
名称:白神の森 遊山道(くろもり館)
住所:青森県西津軽郡鰺ヶ沢町深谷町矢倉山1-26
アクセス:JR五能線「鰺ヶ沢駅」から車で約30分
参考リンク:白神の森 遊山道(鰺ヶ沢町観光協会)
秋田県藤里町の世界遺産センター藤里館と岳岱自然観察教育林
また、秋田県の藤里町から青森県の西目屋村へと延びる県道317号線沿い、湯ノ沢温泉にも「白神山地世界遺産センター藤里館」があります。ここは白神山地の情報施設となっていて、自然アドバイザーが常駐し、自然観察会やトレッキングなどのイベントも行われています。ここから10数km奥にある「岳岱(だけだい)自然観察教育林」もおすすめで、樹齢数百年のブナの巨木に出会えるトレッキングコースで白神山地を満喫する事もできます。
名称:白神山地世界遺産センター藤里館
住所:秋田県山本郡藤里町藤琴字里栗63
アクセス:JR奥羽本線「二ツ井駅」からバス30分「湯ノ沢」徒歩すぐ
参考リンク:白神山地世界遺産センター藤里館
※白神山地は半年近く深い雪に覆われるため、これらの施設やトレッキングコースは、冬期(12月~3月頃)期間中は閉鎖されていますのでご注意ください。
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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