日本三大妙見の八代神社、妙見信仰上陸の地で重要無形民俗文化財の妙見祭に触れる旅
熊本県八代市にある「八代神社(妙見宮)」は日本三大妙見の1つにも数えられる社。「妙見」とはインドで発祥した妙見菩薩の信仰に、古代中国の北極星信仰が習合したものとされます。今回は日本最初の妙見信仰とされる八代妙見を訪ね、重要無形民俗文化財とされる「妙見祭」についてをご紹介していきます。
妙見上陸の地とされる八代の妙見宮は、神道と仏教両部の宮寺
熊本県八代市妙見町にある「八代神社」は、古くから「妙見宮」と呼ばれ、福島の「相馬妙見」、大阪の「能勢妙見」と並んで、日本三大妙見の1つとされます。
妙見神とはインドで発祥した仏教の天部、「妙見菩薩」に、古代中国の北極星、北斗七星の信仰が習合したものとされ、星宿信仰に道教、密教、陰陽道などの要素が混在しています。
そしてこの八代の地は妙見神上陸の地ともされています。縁起によると、白凰9年(680年)に中国の明州から妙見神が目深、手長、足早と化して亀蛇(きだ)に乗って海を渡り、八代の竹原津に上陸したとされ、これが日本における妙見信仰の始まりとされます。
また、延暦14年(795年)に八代内陸の横岳山上に「上宮」を創祀して妙見神を祀り、永暦元年(1160年)にはその麓に「中宮」を創建。そして文治2年(1186年)には後鳥羽天皇の勅願で、現在の八代神社(妙見宮)の地に「下宮」を創建し、妙見神の祭祀を三所で行ったとされます。
その後、妙見宮は神道と仏教の両部の宮寺とされ、広く人々の崇敬を集めて、八代、下益城、芦北三郡の一の宮として繁栄しています。
しかし、明治4年(1871年)の神仏分離令により、神宮寺をはじめとする15の寺院が廃止され、神仏習合において妙見菩薩と同神とされる天之御中主神(あめのみなかぬし)、国常立尊(くにのとこたち)を祭神とする「八代神社」となりました。
※写真は八代神社(妙見宮)の社殿群。この社は上宮、中宮、下宮の三所祭祀の下宮。上宮、中宮は既に途絶え、横岳山上に上宮跡、麓に中宮跡の祠が残っています
霊獣の彫刻で彩られた壮麗な社殿群と異彩を放つ摂末社群
八代神社(妙見宮)の広い境内に入ると、神門の奥には社殿群が鎮座しています。本殿は鮮やかな朱塗りで入母屋造り、正面には千鳥破風が設けられ、妻飾りには数多くの霊獣が彫られています。
これらの社殿群は元禄12年(1699年)と寛延2年(1749年)に改築されたもので、江戸時代中期、後期の社寺建築の特徴がよく現れており、県の重要文化財にも指定されています。
※写真は八代神社(妙見宮)の壮麗な拝殿。霊獣の彫刻で彩られています
そして神門の横には亀蛇碑(きだひ)があります。「亀蛇(きだ、玄武)」は古代中国の霊獣であり、妙見神はこの亀蛇に乗って海を渡ったとされます。また、社殿の前には脚の部分に六地蔵を刻んだ「六地蔵幢(ろくじぞうとう)」の燈籠も立ち、鳥居横には樹齢300年以上とされるご神木、クスノキの古木(市天然記念物)がそびえています。
境内社としては、日本武尊を祀る「大宮神社」と保食神を祀る「稲荷神社」が鎮座。そして境外末社としては、後方の山麓に「霊符神社」が鎮座しています。この社は鎮宅霊符神の総本社とされ、推古天皇の時代に百済、聖明王の王子、琳聖太子がこの地に日本最初の霊符神を伝えた旧蹟とされます。
さらに縁起に記された妙見上陸の地、竹原の津の旧蹟とされる「竹原神社(竹原妙見宮)」は、八代神社(妙見宮)の前方2kmの場所に鎮座し、そこには「妙見神渡来の地」という標木が立っています。
九州三大祭りの1つとされる「妙見祭」の壮麗な行列を知る
毎年11月22日、23日に行われる「妙見祭」。この祭では神輿、神主、社僧、鉄砲、神馬や笠鉾、獅子、亀蛇など、江戸時代そのままの風流を感じさせる行列が立ち、この地域最大の祭礼として10万人を超える人出で賑わいます。
この妙見祭の最も古い記録は永正12年(1515年)のもので、安土桃山時代には一時衰退してしまいますが、加藤清正の肥後入府によって復興、その後寛永9年(1632年)に八代へ入った細川三斎(忠興)がその保護を引き継いでいます。
妙見祭は「博多山笠」、「長崎くんち」と並ぶ九州三大祭りの1つとされ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。さらに平成28年(2016年)には、ユネスコの無形文化遺産「山、鉾、屋台行事」の1つとしても登録されました。
※写真は妙見祭の亀蛇(きだ)。ガメの愛称で知られる亀蛇は妙見祭の人気者です
今回ご紹介した熊本県八代市の旅行スポット
名称:八代神社(妙見宮)
住所:熊本県八代市妙見町405
アクセス:JR鹿児島本線「八代駅」からバスで約15分。「宮地」にて下車すぐ
駐車場:境内に駐車場あり
参考情報:八代妙見祭公式サイト
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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