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日本が誇る世界遺産・八幡製鉄所、近代製鉄の発祥地で技術確立に燃えた人間のストーリーを知る旅

記事公開日:2016/11/21

福岡県北九州市にある「八幡製鉄所」。ここは日本最大の製鉄所として誕生し、明治34年(1901年)に官営製鉄所として操業を始めたものです。しかし、そんな華々しい歴史とは裏腹に操業当初はトラブル続きとなり、計画の半分も生産ができなかったと言います。今回は日本の近代製鉄の曙(あけぼの)とも言える場所を訪れ、製鉄技術を確立させるべく奮闘した人間たちのストーリーをご紹介していきます。

近代製鉄発祥のメモリアル、八幡製鉄所の「東田第一高炉」

※写真は近代製鉄発祥のメモリアル、八幡製鉄所の「東田第一高炉」

 

八幡製鉄所の操業ストーリーは日本近代化の歴史そのもの

 

明治時代の半ば、政府の殖産興業政策による近代化や、軍備増強の影響で鉄の需要は増え続け、政府は明治30年に筑豊炭田の近く、洞海湾に面する福岡県の八幡に官営製鉄所の建設を始めます。そして明治34年(1901年)に官営八幡製鉄所として操業を開始。やがて明治37年(1904年)に日露戦争が勃発し、鉄の需要は急激に増えました。

 

この頃の政府はより生産性が高いコークス炉を完成させて鉄の生産量を上げ、八幡製鉄所は日本の近代化に大いに貢献することになりました。また、その後は民間からの需要増加や、第一次世界大戦の勃発等もあり、八幡製鉄所は拡張工事を繰り返すことで生産量を飛躍的に伸ばしました。この当時の八幡製鉄所は国内の鉄の需要の大半を賄っていたとも言われます。

 

現在の八幡製鉄所は鉄鋼業界の合併や再編に伴い、新日鐵住金の製鉄所となっています。また、明治時代に建築された本事務所や工場などは「明治日本の産業革命遺産」として、2015年に世界遺産に登録されました。

 

明治32年(1899年)に竣工した初代の本事務所

※写真は明治32年(1899年)に竣工した初代の本事務所。中央にドームを持つ左右対称の赤レンガ建造物です。この旧本事務所と旧修繕工場、旧鍛冶工場、遠賀川水源地ポンプ室(中間市)の4資産が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録されています。尚、敷地内は非公開のため、旧本事務所などを望む「眺望スペース」が用意されています。

 

東田第一高炉

※写真は東田第一高炉。近代製鉄発祥の東田第一高炉は世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」のシンボル的存在。指定文化財として公開されています。内部を見学する事ができ、銑鉄を運ぶ貨車なども展示されています。また、併設の「北九州イノベーションギャラリー」では産業技術とその歴史を紹介、多彩なイベントも開催されています。

 

八幡製鉄所の操業ストーリー。日本の近代製鉄技術を完成させた男たち

 

日本の近代製鉄は江戸末期の盛岡藩士、「大島高任」が釜石で西洋式高炉を建造したことに始まります。大島は安政4年(1857年)、日本で初めて鉄鉱石を原料とする西洋式高炉で製鉄を行い、「近代製鉄の父」とも呼ばれる人物です。

 

そして明治13年(1880年)、政府は釜石に官営製鉄所を建設して操業を開始したものの、原料供給の問題や技術力不足のため、わずか2年で閉鎖に。その後、明治20年(1887年)に釜石鉱山の製鉄所が操業を始め、欧米で近代製鉄を学んだ「野呂景義」が迎えられ、日本初のコークス炉による製鉄が行われます。

 

その後の政府は、拡大する鉄の需要に対応するために「八幡製鉄所」を建設します。欧米に派遣された大島高任の息子、「大島道太郎」を技監とし、設計から建設までをドイツの製鉄会社に依頼。そして明治34年(1901年)に東田第一高炉が操業し、八幡製鉄所での生産が始まるのです。しかし、操業当初はトラブルが相次ぎ、生産量は計画の半分にも満たず、翌年の明治35年(1902年)に八幡製鉄所は操業休止に追いこまれてしまいます。

 

そんなタイミングで八幡製鉄所に召喚されたのが、「野呂景義」でした。高炉の再建を託された野呂は、東田第一高炉を本格的なコークス炉へと改良。それから明治37年(1904年)に再開された八幡製鉄所の生産はようやく軌道にのり、日本人による高炉の操業が確立されました。

 

以後、八幡製鉄所の生産量は飛躍的に伸び、ここで培った高炉操業の技術は世界へ誇るものへと成長、日本の戦後経済の発展の原動力となっていきました。この一連の歴史の裏で苦労を積み重ねて期待に応えた大島高任と息子の道太郎、そして野呂景義。改めてそんな視点でこの地を訪れれば、日本の製鉄技術を完成させた人間たちの重さを感じる事ができるはずです。

 

創業時の八幡製鉄所全景

※写真は明治34年(1901年)、創業時の八幡製鉄所全景

 

明治42年(1909年)の東田高炉

※写真は明治42年(1909年)の東田高炉

 

創業時の記念写真

※写真は創業時の記念写真。中央には明治の元勲、伊藤博文や井上馨などの姿も見えます

 

今回ご紹介した福岡県北九州市の旅行スポット

 

名称:東田第一高炉跡、北九州イノベーションギャラリー
住所:福岡県北九州市八幡東区東田
開館時間:9:00~17:00、入館無料
休館:毎週月曜日(祝日・休日の場合はその翌日)
アクセス:JR「スペースワールド駅」徒歩すぐ
駐車場:専用駐車場あり(有料)
参考リンク:北九州イノベーションギャラリー公式サイト


名称:八幡製鉄所 旧本事務所眺望デッキ
住所:福岡県北九州市八幡東区枝光
開場時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)入場無料、観光案内ボランティア常駐
休館:毎週月曜日(祝日・休日の場合はその翌日)
アクセス:JR「スペースワールド駅」徒歩約10分
駐車場:なし
参考リンク:北九州市の世界遺産公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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