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福岡で巡る魏志倭人伝の中の古代国家、日本の国家生成の謎に触れる歴史旅

記事公開日:2016/04/15

大陸の歴史書、三国志の「魏志倭人伝」には、3世紀の倭国にあったとされる邪馬台国へ向かう行程において、「朝鮮半島より海を渡り、対馬国、一支(壱岐)国を経て、末廬国、伊都国、奴国に至る」と、北部九州の国々の存在が記されています。今回はこれら北部九州の古代国家の痕跡を辿る旅へとご案内します。

奴国の丘歴史公園
写真は奴国の丘歴史公園

 

大量の銅鏡を副葬した古代国家、奴国や伊都国の王墓の存在

 

福岡平野に突き出た福岡県春日市の春日丘陵上には「奴国の丘歴史公園」があります。ここは弥生時代中期、後期の大規模遺跡群である須玖岡本(すくおかもと)遺跡とされ、福岡平野にあったとされる「奴国(なこく)」の中心部とされます。遺跡内には弥生時代中期の巨石下甕棺墓があり、30面以上の前漢鏡、銅剣類、ガラス璧(へき)、玉類などが出土し、奴国の王墓とされました。また、敷地内の「春日市奴国の丘歴史資料館」では遺跡の出土品が展示され、奴国の繁栄の様子が再現されています。

 

この須玖岡本の周辺は、弥生銀座と呼ばれるほどに遺跡が密集し、青銅器、ガラス、鉄器などの生産遺跡が特徴的で、古代のテクノポリスであったと考えられています。また、この丘陵の前面には弥生の都市計画遺構が残る比恵、那珂遺跡群、湾岸の博多遺跡などが展開し、広域に及んだ古代国家、奴国中枢の痕跡とされます。

 

そして、須玖岡本の王墓が造られた時代、博多湾の西域、魏志倭人伝にいう「伊都国(いとこく)」に比定される糸島にも、同様の王墓が存在します。糸島市東部の平野にある「三雲南小路遺跡」、この遺跡は周溝を持つ墳丘墓であり、弥生時代中期の王墓とされます。2つの甕棺が埋葬され、それぞれ20、30面以上の前漢鏡、銅剣類、ガラス璧(へき)、玉類などが副葬されていました。また、傍の「井原鑓溝遺跡」にも同様の副葬品をもつ墳墓の存在があり、後続する弥生時代後期の王墓とされています。

 

奴国の丘歴史公園の王墓の上石

※写真は奴国の丘歴史公園の王墓の上石。この大石の下の甕棺墓から30面以上の前漢鏡、銅剣類、ガラス璧(へき)、玉類などが検出され、奴国の王墓とされました

 

奴国の丘歴史公園の甕棺墓群

※写真は奴国の丘歴史公園の甕棺墓群。発掘時の状態で保存されています

 

発掘された後漢の金印が語る古代国家、奴国の繁栄と衰退

 

江戸時代の天明4年、博多湾口にある志賀島の百姓、甚兵衛は水田の耕作中に「金印」を発見します。そして福岡藩の儒者・亀井南冥は、「漢委奴國王」と記されたその印を、後漢の光武帝が57年に奴国に授けたと後漢書に書かれる金印であるとしました。旧福岡藩主黒田家に伝えられたこの金印は、1931年に国宝指定され、現在は「福岡市博物館」で展示されています。

 

1世紀に後漢より冊封され、金印を授けられた奴国の繁栄ぶりは、前述の須玖岡本の王墓や大遺跡群が示しています。九州北部にみられる甕棺墓は、弥生時代の前期に派生し、中期に最盛期を迎え、福岡平野はその中心とされ、須玖あたりで爆発的な盛行を見せています。また、福岡平野では建物なども弥生時代の中期に急激に増加しています。

 

しかし、その奴国もやがてはその力を失います。弥生時代後期の後半には、須玖岡本遺跡は急激にその遺構を激減させ、盛行をみせた甕棺墓も衰退します。そして、魏志倭人伝には3世紀の邪馬台国による奴国支配の様子が記され、そこには国王の存在が既にありません。邪馬台国によって弥生の強国、奴国は解体されたものなのでしょうか?金印の異常な出土状況は、何らかの異変が奴国に起きたとも思わせます。

 

志賀島の金印公園

※写真は金印の出土地とされる志賀島の金印公園。金印発光の碑が建てられています

 

弥生時代最後の王墓・平原遺跡が語る、伊都国の繁栄

 

一方で3世紀、伊都国は邪馬台国によって北部九州の拠点とされています。魏志倭人伝は韓半島、大陸との交流を伊都国が担うと記し、また、伊都国に一大率を置いて諸国を検察させるとして、地方行政の機能も伊都国に置きます。同時に伊都国には王の存在も記されています。

 

尚、糸島市の曾根丘陵には平原遺跡があります。ここの3世紀の築造とされる墳丘墓から、国内最大の直径46.5cmの鏡5面を含む銅鏡40面が出土します。弥生時代の王墓の中で最多の銅鏡副葬を誇るこの墳丘墓は、弥生時代最後の王墓とされ、当時の伊都国の繁栄ぶりを伺わせます。ここで出土した銅鏡の多くは国宝に指定され、現在は井原の「伊都国歴史博物館」で展示され、伊都国の繁栄の様子が再現されています。

 

奴国と伊都国、この2国は対照的な運命を辿ったようです。そして、北部九州のこの2つの古代国家の趨勢は、わが国の国家生成の謎をも秘めていると言われています。

 

伊都国の港湾とされる今津湾と背後に広がる伊都の平野

※写真は伊都国の港湾とされる今津湾と背後に広がる伊都の平野

 

宇美の光正寺古墳

※写真は宇美の光正寺古墳。3世紀の前期古墳とされ、奴国に隣接する不弥国王の墳墓ともされます

 

今回ご紹介した福岡・古代旅のスポット

 

名称:春日市奴国の丘歴史資料館
住所:福岡県春日市岡本3-57
アクセス:JR鹿児島本線「南福岡駅」徒歩約20分
駐車場:専用駐車場あり
参考リンク:春日市奴国の丘歴史資料館の公式サイト

名称:福岡市博物館
住所:福岡市早良区百道浜3丁目1-1
アクセス:市営地下鉄「藤崎」バスで約10分
駐車場:専用駐車場あり
入館料:常設展示 一般200円、高大生150円
参考リンク:福岡市博物館の公式サイト

名称:伊都国歴史博物館
住所:福岡県糸島市井原916
アクセス:JR筑肥線「波多江」タクシー、バスで約10分
駐車場:専用駐車場あり
入館料:一般210円、高校生100円

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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