日本茶発祥の地、そして日本最初の禅寺、博多の聖福寺で禅の真髄に触れる旅
記事公開日:2016/02/02
福岡市にある「聖福寺」は栄西の創建と伝えられる日本最初の禅寺。そしてここは「日本茶の文化の始まりの地」としても知られます。今回は日本文化の源流の1つともされる名刹を訪ねる福岡旅をご紹介していきます。

※写真は聖福寺仏殿。内部の須彌壇には釈迦、弥勒、阿弥陀の三世仏が鎮座し荘厳な空間を作っています
日本禅宗の祖、栄西が開いた聖福寺は七堂伽藍が広がる名刹
福岡市博多区の御供所町一帯は多くの寺院が集中する寺町です。現在は市街地化された大博通り界隈に位置しているものの、昔の佇まいを残し、歴史と文化が息づくスポットとしても親しまれています。中でも日本禅宗の祖とされる「栄西(えいさい)」によって開かれた名刹「聖福寺(しょうふくじ)」は、広大な境内に山門、仏殿、方丈、庫裡、禅堂などの禅宗様式の七堂伽藍が広がり、周辺に開山堂、護聖院、経蔵や塔頭寺院が立ち並んで、国の史跡にも指定されています。

※写真は山門。境内は広く、春は放生池のしだれ桜が美しく、夏は濃い緑、秋には紅葉が楽しめます
日本最初の禅寺、聖福寺の波乱の歴史を知る
御供所町を含む博多の旧市街は、「那津(なのつ)」と呼ばれた古代から日本における大陸への玄関口であり、国際交流の地でした。平安時代には平清盛によって「袖の湊(そでのみなと)」が開かれて日宋貿易の拠点となり、後には日本初の自治都市としても栄えています。そして御供所町一帯は寺町として国際的な智識が集まった地でした。中でも聖福寺はその中心であり、南宋より帰国した栄西は、建久6年(1195年)に源頼朝から博多の方八町を戴き、聖福寺の伽藍を建立します。
その後の室町時代には五山十刹に数えられ、聖福寺は隆盛を極めます。戦国時代の戦乱によって兵火を受けた時もあるものの、天正15年(1587年)に筑前太守、小早川隆景が寺領を寄進し、仏殿、総門などを修営します。そして文禄4年(1595年)には豊臣秀吉から、慶長5年(1600年)には黒田長政から寺領の寄進を受けて再興しています。
ちなみに聖福寺の表塀は「博多塀」と呼ばれています。戦国時代、相次ぐ戦乱によって博多の町は焦土と化しましたが、博多塀は焼け跡の瓦や石を埋め込んで作った土塀となっていて、現在は歴史遺産として大切に保存されています。

※写真は山門。後鳥羽天皇により贈られた「扶桑最初禅窟」の扁額が掲げられています

※写真は山門の住人たち
日本仏教の中興や茶の文化を創始した栄西。聖福寺は日本文化の源流の1つ
栄西は比叡山で天台の教学を学び、形骸化した天台宗を立て直すべく、南宋で禅宗を学びます。そして帰国した栄西は禅道場としての聖福寺を創建し、「禅」が仏法を復興すると説きます。その後、栄西は京都で建仁寺を建て、東大寺の復興に尽力し、日本仏教の中興に努めています。
また、栄西は宋から「茶」を持ち帰り、聖福寺の境内や背振山などに植えています。佐賀県脊振山山麓の霊仙寺跡には、栄西が栽培したとされる茶畑が今も残されています。栄西は全国に茶を広め、日本の茶の文化を創始した人物として知られ、「茶祖」とも称されます。そして後の江戸時代の文化・文政期には禅画で名高い「仙厓(せんがい)」が、聖福寺の住持を務めています。仙厓は軽妙洒脱な禅画を描き、機知に富んだ句で禅の教えを説いて人気を集めました。

※写真は世俗を離れた塔頭への道。周辺はとても閑静でここが市街地であることを忘れさせます。また、聖福寺では坐禅会や写経会が行われて人気を集めています

※写真は隣接する東長寺。この寺は806年(大同元年)に唐より帰国した空海が創建したもの。木造座像としては日本最大の福岡大仏が鎮座します
今回訪れた福岡旅のスポット
名称:聖福寺
住所:福岡県福岡市博多区御供所町6-1
アクセス:地下鉄空港線「祇園駅」徒歩3分
駐車場:無し(近隣にコインパーキングあり)
参考リンク:聖福寺の公式サイト
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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