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熱田神宮、三種の神器の1つである草薙剣を祀る宮で神剣の伝説に触れる歴史旅

記事公開日:2016/11/10

名古屋にある熱田神宮は「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」を祀る宮として知られます。この草薙剣は日本神話において、素戔嗚尊の八岐大蛇退治や瓊瓊杵尊の天孫降臨、さらに日本武尊の東国平定にも登場し、国づくりに関わった大いなる剣だと言われています。今回は改めて熱田神宮を訪れ、草薙剣の神威を感じる歴史旅へとご案内します。

熱田神宮本宮の拝所、外玉垣御門

※写真は熱田神宮本宮の拝所、外玉垣御門

 

草薙剣の神話にもとづく熱田神宮の悠久の歴史

 

名古屋市熱田区にある「熱田神宮」は三種の神器の1つ、「草薙剣(くさなぎのつるぎ、天叢雲剣)」を熱田大神として祀ります。この草薙剣は素戔嗚尊(すさのお)が出雲で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した時に、その尾から出た神剣。そして天照大神へと献上された草薙剣は、天孫降臨の際に瓊瓊杵(ににぎ)尊が三種の神器として身につけ、それ以来宮中や伊勢神宮で祀られてきました。

 

やがて第12代景行天皇の時代に、東国平定へと向かう日本武尊(やまとたける)が草薙剣を手にします。そして日本武尊は草薙剣の威をもって東国を平定しますが、帰途に病に倒れ、伊勢で亡くなってしまいます。それから草薙剣は日本武尊の妃、宮簀媛命(みやすひめ)の手によってこの熱田の地に祀られたと言います。

 

これ以来、草薙剣は熱田に置かれているとされ、熱田神宮は伊勢神宮に次ぐ国家鎮護の社として栄えています。現在も宮中の年始儀礼、四方拝で遥拝される宮ともされ、多くの人の崇敬を集めています。

 

熱田神宮の神楽殿

※写真は熱田神宮の神楽殿

 

国家成立の謎が秘められた、草薙剣の神話と熱田神宮の祭祀

 

「三種の神器」は天孫降臨の際、瓊瓊杵尊が天照大神から授けられたという鏡、玉、剣の三種であり、天皇の皇位の証(あかし)だともされます。考古学において王権を象徴する鏡、玉、剣のセットは、北部九州などの弥生王墓の副葬品として見られ、その思想は既に弥生時代中期には生まれていると言います。

 

また、鏡、玉、剣はそれぞれ知、仁、勇を象徴するとも言われ、天皇が兼ね備える徳ともされます。さらに天孫降臨の際、天照大御神が鏡に化したことで、「鏡」は天皇の祖先祭祀を表し、「玉」は文明を表し、天皇の善政の象徴ともされます。それに加えて「剣」は天皇が持つ武力の象徴とも言われています。

 

この三種の神器を意義だけでなく、何らかの史実が神話に投影されたものだと考えた場合、草薙剣(天叢雲剣)は天皇に従属した戦闘集団を投影するという説があります。

 

神話の中で草薙剣は、素戔嗚尊が出雲で八岐大蛇を倒した時にその尾から出てきます。そして素戔嗚尊は草薙剣を天照大神に献上し、天照大神は天孫降臨の際に瓊瓊杵尊へと授けます。もし草薙剣が出雲出自の戦闘集団を投影しているとすれば、素戔嗚尊から天照大神、そして瓊瓊杵尊にそれぞれ従属し、国家生成に関わった集団の存在を彷彿とさせます。

 

また、古くは熱田神宮で草薙剣を奉祭し、大宮司職を務めたとされる「尾張氏族」の存在もあります。この尾張氏は熱田神宮に草薙剣を祀った宮簀媛命にも繋がるとされます。尾張氏には謎が多く、祖神とされる饒速日(にぎはやひ、天火明)は出雲系の出自ともされます。また、出雲域の因幡にも氏族があり、その存在には興味深いものがあります。実際、宮簀媛命の兄、建稲種命は日本武尊の東国平定に副将として従軍し、これもまた戦闘集団の存在を思わせます。

 

そもそも神話というのは政治的な意図を持って創作されたものとも言われます。しかし、荒唐無稽な話をわざわざ作りあげたわけではなく、何らかの史実を投影して創作されたこともまた事実かもしれません。熱田神宮の草薙剣祭祀には国家生成にまつわる謎が秘められているようにも思えてきます。

 

大楠が茂る参道

※写真は大楠が茂る参道

 

霊気漂う大楠の森。そして6万坪の境内に鎮座するのは43もの社

 

社伝によれば、熱田の地は潟に面して老松古杉の杜(もり)が岬となり、古来より神仙の住む蓬莱島ともされた霊地だと伝わります。約6万坪の境内には樹齢1,000年を越える大楠が茂り、名古屋の市街地にありながら神秘の森が広がっていて、パワースポットとしても人気を集めています。

 

正門である南門のそばには境内社の筆頭とされる別宮「八剣宮」が鎮座していますが、これは和銅元年(708年)、勅命によって神剣を祀ったとされています。古来より武家の信仰を受け、天正3年(1575年)には織田信長が長篠へ出兵する際に社殿を修造、そして慶長4年(1599年)の関ヶ原の戦いの前年には、徳川家康が拝殿などを修造しています。横には宮簀媛命の父、尾張国造の乎止與(おとよ)命を祀る熱田の地主神、「上知我麻(かみちかま)神社」も鎮座します。

 

また、摂末社が散在する森の中、一直線に延びた参道の奥には「本宮」が鎮座します。拝所は外玉垣(とのたまがき)御門。この御門と四尋殿(よじんでん)を併せて拝殿としています。その奥には熱田大神が鎮まる本殿があり、相殿には天照大神、素盞嗚尊、日本武尊、宮簀媛命、建稲種命の五神(ごしん)さまと呼ばれる神々を祀っています。

 

この本宮の周辺には神楽殿、祈祷殿、斎館、勅使館などが散在しますが、本宮の前面には織田信長が桶狭間の戦いの戦勝御礼として造った塀(信長塀)があり、「日本三大土塀」の1つともされています。

 

その他にも熱田神宮の境内外には本宮、別宮をはじめ、摂末社など43社が祀られ、主な神事だけでも年間70以上を数えるとされます。また、宝物館には国宝や重要文化財をはじめ、皇室や徳川将軍家、尾張徳川家などから寄進された宝物6,000点が所蔵されます。この圧倒的なスケール感こそが、伊勢神宮に次ぐ宮とされる所以なのかもしれません。

 

正面から見た熱田神宮の神楽殿

※写真は正面から見た熱田神宮の神楽殿

 

今回ご紹介した愛知県名古屋市の旅行スポット

 

名称:熱田神宮
住所:愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1
アクセス:名鉄名古屋本線、名古屋市営地下鉄名城線「神宮西駅」、JR線「熱田駅」など各駅からすぐ
駐車場:境内に駐車場あり
参考情報:熱田神宮公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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