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宇佐神宮、全国に4万ある八幡社の総本宮へ参拝し、その成り立ちの謎に迫る大分旅

記事公開日:2015/12/17

全国に約4万もの数があると言われる八幡社の総本宮「宇佐神宮」。この宮に祀られる祭神、比売大神(ひめのおおかみ)は謎の女神とされています。今回は伊勢神宮に次ぐ日本の第二の宮「宇佐神宮」で、比売大神の謎に触れ、古代ロマンに浸る大分旅をご紹介していきます。

宇佐神宮、南中楼門

※写真は宇佐神宮、南中楼門。高良明神、阿蘇明神の二神を門神とする勅使門

 

応神天皇を主神とする八幡三神の神威は広大無比。厚い崇敬を集める

 

「宇佐神宮(うさじんぐう)」は、大分県宇佐市に鎮座する、かつての豊前国の一宮です。ここは全国に約4万あると言われる日本最多の神社、八幡社の総本宮となっています。古くから伊勢神宮に次ぐ第二の宗廟として、皇室の厚い崇敬を受けてきた勅祭社でもあります。

 

祭神の八幡大神とは応神天皇の神霊であり、571年に宇佐に顕(あらわ)れたと言われ、比売大神と母神の神功皇后を合わせて「八幡三神」とされています。その威光、威力は広大で、奈良の東大寺の大仏建立の託宣や、道鏡の神託事件など、皇室や中央との結びつきが強く、大きな影響力を持ちました。そして後には武神として武家たちの崇敬も集めていきました。

 

宇佐古来の様式をもつ大鳥居

※写真は宇佐古来の様式をもつ大鳥居

 

澄んだ空気に包まれる広大な神域は、貴重な建築や遺跡が散在する国の史跡

 

寄藻川(よりもがわ)が流れ、菱形池(ひしがたいけ)に彩られた宇佐神宮の広大な神域の奥には、太古の原生林を残す亀山丘陵の麓に「下宮」が、そして山頂には「上宮」が鎮座しています。神域の中には仁徳天皇を祀る若宮神社や、武内宿禰を祀る黒男神社などの摂末社群があり、その他にも神橋、呉橋、能楽殿などが散在しています。

 

また、この宇佐神宮は神仏習合にゆかりのある場所であり、かつては弥勒寺の大伽藍が建立されていました。現在は金堂や塔の旧蹟が礎石だけを残していますが、八幡造りの本殿については国宝とされていて、貴重な建築や遺跡が散在する神域全体については国の史跡にも指定されています。

 

菱形池に浮かぶ能楽殿

※写真は菱形池に浮かぶ能楽殿

 

宇佐神宮の主神、比売大神の存在は、九州古代史の大きな謎の1つ

 

亀山山頂の本殿には3つの神殿が並び、左より主神の応神天皇、比売大神(ひめのおおかみ)、神功皇后の順に祀られています。そしてここを実際に訪れて昇段し、参拝をしてみると、中央の比売大神の神殿の前には、祈祷のための申殿(もうすでん)が配されていて、この比売大神を本来の祭神とする説には説得力が感じられるようにも思います。

 

宇佐神宮の縁起の中では、比売大神は八幡神が現れる以前の宇佐の地主神とされ、宗像三女神のことであるとします。しかし、その出自については古来より多くの説が述べられています。玉依比売や神功皇后の妹ともされる豊比売命、また、下照姫や国東、姫島の比売許曽神、阿加流比売などがそれに当たります。さらに近年には比売大神=卑弥呼や台与(とよ)ではないかという説までが流布し、これは九州の古代史における大きな謎の1つとなっています。

 

亀山山麓の下宮

※写真は亀山山麓の下宮

 

美しい桧皮葺の屋根を持つ高倉

※写真は美しい桧皮葺の屋根を持つ高倉

 

宇佐に関わる古代の氏族たち。複雑な宇佐神宮の成り立ち

 

比売大神の出自に関する説の混乱は、宇佐神宮の成り立ちの複雑さに起因するとも言われます。この宇佐神宮に対する信仰の歴史は古く、かつての宇佐の国人・宇佐氏の比売神信仰に加え、渡来系の辛嶋氏が香春(現在の福岡県田川郡香春)から豊前を経て、シャーマニズム(原八幡信仰)を持ち込み、さらに6世紀には大和三輪山の祭祀氏族、大神比義が宇佐へと下向し、応神天皇の八幡信仰を同化させたとも言います。

 

その上、この宇佐神宮がある地を含む大分の中津平野は、畿内へ向かう氏族が集結する地でもありました。まさに半島からの渡来人も含めた氏族の坩堝(るつぼ)になっていた地です。そのために多くの氏神が混在するという状況が生まれています。こういった歴史の背景が宇佐の比売大神という神格を解りにくくしているとも言われます。

 

中津平野から望む宇佐の故地と安心院(あじむ)の山々

※写真は大分の中津平野から望む宇佐の故地と安心院(あじむ)の山々

 

宇佐神宮は四拍手での参拝が作法。これが意味するものとは?

 

宇佐神宮の参拝作法は一般的な「二拝二拍手一拝」とは異なり、出雲大社と同じ「二拝四拍手一拝」とされている点にも謎があります。出雲大社は国譲りに応じた冥府の王、大国主神が隠れる社とされています。宇佐の比売大神も、大和三輪山の祭祀氏族、大神氏が宇佐へと持ち込んだ国家神、応神天皇と神功皇后の神霊に挟まれ、まるで結界の中にあるようにも見えます。宇佐神宮が持つ歴史が故に、祭祀が統制できぬことを恐れた時の為政者たちが、出雲大社と同じ「四拍手」の参拝作法を取り入れたのでしょうか。宇佐神宮にまつわる多くの謎は、常に私たちの歴史ロマンを掻きたててくれています。

 

今回ご紹介した大分旅のスポット

 

名称:宇佐神宮(うさじんぐう)
住所:大分県宇佐市南宇佐2859
アクセス:JR日豊本線「宇佐駅」からバス、またはタクシーで約10分
駐車場:社頭に駐車場あり(有料)
参考情報:宇佐神宮の公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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