神戸ルミナリエ、イルミネーションが街を華やかに包み、心の中の神戸を伝えるスポットを巡る旅
神戸の街では今年も21回目の電飾の祭典「神戸ルミナリエ」が行われています。今年の開催は12月4日(金)から12月13日(日)の10日間、今回は神戸の風物詩イベント、ルミナリエの見所や、ルミナリエの裏側にあるストーリーをお伝えしていきます。
毎年クリスマス前のこの時期になると、趣ある建物が立ち並ぶ「旧居留地」地域は華やかな空気に包まれ、多くの人々で賑わいます。そしてこの時期にここで行われるイベントと言えば、明るいイルミネーションが夜空を美しく輝かせる、「神戸ルミナリエ」です。
JR元町駅で電車を降り、大丸から中華街を横に見ながら旧居留地38番街を抜けます。途中には、この旧居留地と北野異人館を結ぶ「トアロード」、ライトアップされた「神戸セントモルガン教会」、そして三ノ宮の地名の由来ともなった「三の宮神社」など、由緒ある場所を通って向かいます。
「ルミナリエ」の起源を辿っていくと、16世紀のバロック時代の装飾がルーツとなっていて、イタリア南部では「光の芸術」と呼ばれるまでに昇華したと言われています。そして2015年、神戸の街で行われるルミナリエのテーマは「心の中の神戸」。イタリア人、ダニエル・モンテベルデ氏の作品だそうで、希望と再生の象徴として、「私たちの心の中で神戸は輝き続けます」というメッセージが寄せられています。
30分前後でルミナリエの「フロントーネ」(入り口)へと到着する事ができます。造形の名称はイタリア語ですが、それぞれにはテーマが付けられています。このフロントーネのテーマは「栄光への扉」。今回は初めて、屋根付きの回廊(ガレリア・コペルタ)が造られています。
そして「輝きの間」と名付けられた回廊(ガレリア)が続きます。この美しいイルミネーションの下を抜けて行くと、東遊園地(公園)へと入っていきます。
東遊園地には王冠状の光に包まれた美しいエリアが広がっています。これは「バラの冠」と名付けられたスパッリエーラ(光の壁掛け)です。周囲は明るく、どこを向いても背景に光の造形が映り込むので、ここは記念撮影のベストポジションとも言えるようなスポットになっています。
神戸市役所の24階から見たルミナリエの会場です。夜景に浮かぶ2つの「スパッリエーラ」(光の壁掛け)がなんとも美しい姿を見せてくれます。
20年が経過し、変わりゆく神戸ルミナリエ
神戸ルミナリエの来場者数は、2004年には約538万人を記録しています。しかし、2014年には来場者数が344万人まで減少、単年度の収支も1,800万円の赤字となってしまい、継続が危ぶまれる事態になっていました。そのため2015年については日程を2日間短縮して10日間とし、光の回廊(ガレリア)の長さも80m短くして190mとなっています。
神戸ルミナリエが最初に行われたのは1995年でした。それから20年もの時が流れていますが、今では全国各地で光のイルミネーションが増え、電球の個数の多さなどが宣伝の対象となり、イルミネーションの派手さや華麗さを競うようになってきています。そう思うとイタリア伝統の荘厳さを表現した神戸ルミナリエのような光芸術は、今の時代にマッチしきれていない部分も出てきているかもしれません。
しかし今、ルミナリエでは新たな取り組みも始まっています。イルミネーションの通り抜けが中心だった神戸ルミナリエに、ジャズの生演奏や音楽に合わせて動く光のショーなどが追加され、新たなエンターテイメント空間を創出するなど、より集客を意識した取り組みへと進んでいます。
南側には新たなスパッリエーラ「幻想の広場」が。ここは「踊る!KOBE光のファウンテン」のイベントが繰り広げられる場所となっています。噴水池の水面には美しいイルミネーションが映り込み、幻想的な情景を感じさせてくれます。
ここはルミナリエの主催者側の何とかせねばという危機感に対し、鎮魂の思いはそのままにしながら、新たな魅力を発信しようという、神戸ゆかりの企業の新たな提案がマッチして実現したものとなっています。また、ルミナリエではイルミネーションの光も消費電力が少ないLEDへと統一し、例年の1.5倍、約30万個もの光の数になっています。
東遊園地には多くの屋台が並び、神戸ならではのグルメも楽しめる
新たな取り組みが進む一方で、ルミナリエの運営資金は依然として不足しているため、今年からはインターネットで寄付を募る「クラウドファンディング」の取り組みも行われています。ルミナリエの会場でも光の回廊を歩いていくと、多くの大学生や高校生ボランティアたちが、「1人100円」の募金活動を行なっています。自分たちが住むこの街のイベントを守り、今後も継続させたいという熱い想いがひしひしと伝わってきました。
募金するともらえるのがこの「Thank Youカード」です。小さい文字ではありますが、「神戸の夢と希望を象徴する行事として、毎年開催しています」と力強く書かれています。
この日は全国の被災地と連携した募金運動も活発に行われていました。
神戸ルミナリエを守り、続けていく先に、新たな意味や価値が生まれてくる
もし「神戸ルミナリエ」が、人々の心を楽しませ、和ませてくれるイベントとして継続していけば、それは次第に風物詩となっていき、次世代へと語り継がれていくことになります。今、日本各地に残る古典芸能や伝承の祭りなども、こうやって守り継がれていき、いつの日か「歴史」となっていったはずです。
この神戸ルミナリエが始まった20年前は、阪神淡路大震災が起きた年でした。大きな地震で思わず飛び起きた朝、時間毎に死傷者は増え、街の皆は恐怖を感じていました。店に行けば品薄のためにポリタンクすら買えず、私が近所の方にポリタンクを差し上げた時は随分と感謝されたのを記憶しています。また、4年前には石巻に住む義姉の弟の家が水に浸かってしまい、3日間に渡って耐えたという出来事もありました。
同じ公園の敷地内にある「慰霊と復興のモニュメント」。地下には亡くなられた方の名前が掲示されています。こちらもルミナリエの期間中については消灯時間が延長されています。
円型の「バラの冠」のそばにある「希望の灯り」。ここの碑文には、「この灯りは奪われたすべての命と、生き残った私たちの思いを結びつなぐ」と記されています。
神戸の街のルミナリエは、この先も続いて欲しいと願っています。毎年ここで美しい光に包まれながら、一年に一度くらいは薄らいでいく記憶を思い起こすことも、時には必要なのかもしれない。そんな風に感じながら歩いた、今年のルミナリエでした。
今回ご紹介した神戸旅のスポット
名称:神戸ルミナリエ
住所:東遊園地:兵庫県神戸市中央区加納町6丁目
アクセス:JR元町駅から徒歩30~50分程度で周回できるようになっています
播磨翁
兵庫県の播磨国に在住。ワクワク出来る歴史旅をご紹介できれば幸いです。個人的には謎がありそうなディープな歴史が好きです。
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