神戸山の手、北野異人館の見所と知られざる歴史を学びながら歩く旅
神戸・三ノ宮から北野坂を上がっていくとそこに広がるのは「異人館」の街。異国情緒溢れるこの地域は、国の「伝統的建造物群」の指定も受け、今も大切に保存されています。今回は神戸北野の異人館街を散策しながら、この場所の知られざる歴史をご紹介していきたいと思います。
数々の洋館が立ち並ぶ「神戸異人館」
こちらは神戸異人館を代表する建物である「風見鶏の館」。明治42年頃にドイツ人貿易商トーマスの自宅として建てられました。赤煉瓦の深い色合いと、街を見下ろす風見鶏がとても印象的な建物です。
そして隣には「萌黄(もえぎ)の館」があります。こちらはアメリカ総領事の邸宅として建築され、大きなベランダや窓が特徴のコロニアル様式で、格調高い様式美が評価されて風見鶏の館と同じく、重要文化財に指定されています。
建物の目の前には円形の「北野町広場」も。休日には大道芸などのストリートパフォーマンスで賑わっています。ここはちょうど、北野坂を上がってきた観光客の皆さんが一息つける場所にもなっています。
そしてこちらの建物は「うろこの館」。壁には天然石のスレート板を並べてあり、それがまるで鱗のように見えます。明治38年に旧居留地に建てられ、神戸で最初に公開された異人館だそうです。
「うろこの館」の庭の中央には「ポルチェリーノの猪像」があります。イタリアのウフィツィ美術館第三廊下にあるローマ時代の彫刻像が起源ですが、後にフィレンツェの市場にもブロンズ像が置かれました。この像の鼻の部分を触ると幸せになるという評判で世界中に広がっているそうで、この「うろこの館」の像もご利益は同じとのこと。ぜひ鼻を触って幸せのおすそ分けにあずかりましょう。
「うろこの館」の館内にはドイツの古いマイセンなど、名品のコレクションが数多くあり、必見の価値ありですよ。
神戸の街を一望できる眺めの良さ!
「うろこの館」は高台に位置し、神戸の街並みが一望できるのも大きな魅力になっています。晴れ渡った日であれば、もっと素晴らしい景色を楽しむ事ができますよ。
うろこの館にはこんな魔女も!?
ちなみにうろこの館ではこんな風に魔女も神戸の街を見下ろしていました。なんとなく指でつまんでみたくなる感じ。こんな風な写真を撮影するのも結構流行っているそうですよ。
その他にも「山手八番館」「北野外国人倶楽部」などを目にしながら、細い小道の「オランダ坂」を下って行きます。1つ忘れていましたが「山手八番館」には、座るだけで願いごとが叶うという「サターンのイス」なるものがあるそうですよ!
北野町東公園から石段のある道を下っていくと、「ラインの館」「神戸北野美術館」を通ります。エキゾチックな風情のある小路をゆっくり歩くと、自然と心も癒されてきますね。
そして広い道「北野通り」へと出ました。シティ・ループバスの「北野異人館」の停留所がある場所にもなっています。
近くには「英国館」もあります。ここはイギリス人医師の邸宅で、立派なパブ・カウンタがあると聞き、邸内を訪れてみました。
夕方からはパブに変身!実際にココでお酒が飲める
19世紀頃の英国貴族の家にあったカウンターだそうで、歴史を感じる重厚な作りになっています。カウンターの後ろには多くの洋酒が並んでいますが、ここで実際にお酒を飲む事もできるんですよ。
英国館は夕方から「King of Kings(キングオブキングス)」という名前のパブに変身します。普通に「食べログ」などで検索しても名前が出てきます。建物は明治40年頃の神戸市指定「伝統保存建造物」の異人館です。ここで少し緊張しながらもお酒を飲むのは、それはそれで洒落ているように思います。
英国館の2階には、名探偵シャーロックホームズの住まいや、事件にまつわる小物が展示されていますよ。
異人館にまつわる歴史。支えたのは地元の熱い思いだった
慶応3年(1867)の神戸開港で、神戸の街に「居留地」が誕生しました。しかし外国人の増加ですぐに手狭になってしまい、他の居留地にはない神戸特有の「雑居地(日本人居住内)」が設定され、そこに現在の異人館が誕生します。
第二次大戦当時、航空機の工場があった神戸の街。実に128回もの空襲を受けたと言われています。この影響で海岸近くの居留地は壊滅しましたが、北野の異人館は高台にあったため、奇跡的に戦災を免れました。
その後も危機は続き、高度成長期にはビルへの建て替えが進み、建物の数は減少していく事になります。しかしそんな時に立ち上がったのが地元の市民でした。1970年代から住民たちが協力し、建物の愛称を公募したり、街路整備を行うなど、景観保存の活動を進めてきました。
そして1980年にはその活動が認められ、文化財保護法による国の「伝統的建造物群保存地区」の指定を受けます。異人館などでの指定は、グラバー邸に代表される長崎市とここ神戸市の2か所のみだそうです。
阪神淡路大震災を乗り越え、再び街のシンボルとして復興
平成7年(1995)の阪神淡路大震災ではこの地も大きな被害を受けました。しかし、市民は再び立ち上がり、全国の自治体、研究機関、ボランティア等の支援を受け、苦労しながらも復興をやり遂げました。
この地区の「まもり、そだてる会」という会では、震災前に観光客の騒音やマナーの面で少なからず迷惑を感じていたと言いますが、町のシンボルでもあった異人館が震災によって崩壊していく衝撃の光景を目の当たりにし、地区住民が改めて街への愛着と重要性を再認識したと言われます。
異人館を守り続ける地域活動は現在も継続されています。これからも多くの観光客に、貴重な歴史的景観として親しまれ続けることを願いたいと思います。
神戸はジャズも盛んな街、三ノ宮から歩いて北野へ行ってみるのもお薦め
JR三ノ宮駅を出て「北野坂」から「トーマス坂」をまっすぐ上がると、およそ20分ほどで異人館に到着できます。その道筋には洒落たお店の街並みも続いています。神戸はジャズの盛んな街でもあり、道の途中には「SONE」という老舗のジャズライブ・バーもありますので、のんびり歩いてみるのもお薦めですよ。
今回訪れた歴史スポット
名称:神戸・北野異人館
住所:兵庫県神戸市北野町山本通
アクセス:JR「三ノ宮駅」から北野坂より北へ徒歩約20分
バスの場合はシティ・ループバス「地下鉄三宮駅前・北行」に乗車、約15分で「北野異人館」
播磨翁
兵庫県の播磨国に在住。ワクワク出来る歴史旅をご紹介できれば幸いです。個人的には謎がありそうなディープな歴史が好きです。
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