日本最後の本格城郭建築とされる松山城、日本三大平山城の見所を知り松山城下の魅力に浸る旅
日本最後の本格城郭建築とも言われる「松山城」。この城は現存12天守の1つに数えられ、21棟の建造物が国の重要文化財に指定されるなど、見所が多い城となっています。今回は四国随一の名城とも呼ばれる松山城に登城し、日本三大平山城の見所を知り、松山城下の魅力に浸る旅へとご案内します。
※写真は大天守から望む松山城下の街並み
※写真は天守群。大天守と小天守、南隅櫓、北隅櫓を渡櫓(廊下)で繋いだ連立式天守です
大天守など21棟の重要文化財や二之丸史跡庭園など見所は多彩
「松山城」は愛媛県松山市の中心部に位置し、標高132mの城山(勝山)山頂を本丸としている平山城です。この城は別名「金亀城(きんきじょう)」とも呼ばれ、山の麓に二の丸(二之丸史跡庭園)、三の丸(堀之内)が配されています。また、松山城は大天守を含む21棟の現存建造物が国の重要文化財に指定され、二の丸と三の丸を含む城址は、国の史跡となっていて、城山公園として整備されています。
さらにこの城は「日本三大平山城」にも数えられ、大天守は現存12天守の1つともされています。度重なる火災で焼失した連立式天守群の5棟や、城内22棟の建造物が昭和43年(1968年)に木造で復元され、2009年の「ミシュラン観光版日本編」では、二つ星の観光地に選定されました。
※写真は松山城の大天守。大天守は安政元年(1854年)に落成した3代目のもので、3重3階の層塔型天守。高さは20m、各階には武者走りが設けられています。1、2階部分は黒塗下見張り、3階部分は白漆喰塗りになっていて、外廻縁、高欄が廻ります。屋根には千鳥破風や軒唐破風が配され、日本最後の桃山様式の天守建築とされています。
落雷や火災に見舞われ続けた松山城の風雲の歴史
松山城の歴史を紐解いていくと、慶長7年(1602年)、伊予国正木城(松前)の城主であり、10万石の大名でもあった加藤嘉明へと辿り着きます。加藤嘉明は関ヶ原の戦いの戦功で20万石へと加増され、北方の勝山で新たな城作りに着手します。嘉明はこの城地を「松山」と名付けて築城を急ぎますが、城が完成する前に会津へと移封になってしまいます。
その後の寛永4年(1627年)、蒲生氏郷の孫である蒲生忠知が24万石で松山藩主となりますが、この忠知も寛永11年(1634年)に参勤交代の途中で死去し、蒲生氏は無嗣断絶となってしまいます。そして翌、寛永12年(1635年)に松平定行が15万石で松山城へと入る事になります。
記録によれば天明4年(1784年)、松山城は大天守以下、本壇の建造物が落雷によって焼失。そして安政元年(1854年)、第12代の藩主であった松平勝善が城を再建しています。また、明治維新後の失火では二の丸と三の丸が焼失、そして明治6年(1873年)の廃城令では麓の城門や櫓などが解体され、本丸一帯は公園となりました。
さらに昭和8年(1933年)の火災では大天守を除く本壇の建造物が焼失、その後も空襲や火災に見舞われ続け、多くの建造物を失いました。しかし、戦後の昭和43年(1968年)に本壇の小天守以下5棟をはじめ、城内22棟の建造物が木造で復元され、現在の松山城の姿へと戻されました。
※写真は復元された松山城の太鼓櫓
※写真は乾門と乾門東続櫓
山上の本丸から麓の二之丸史跡庭園へ。日本三大平山城「松山城」の歩き方
松山城へアクセスする際は、市内電車の「大街道」電停から、ロープウェイ街を通って徒歩5分の「松山城ロープウェイ東雲口駅」へと向かいます。そしてロープウェイで3分、またはリフトで6分の山上、長者ヶ平へ。この長者ヶ平から本壇の天守入口までは徒歩で10分ほどとなっています。
筒井門、隠門から太鼓門を抜けて山上の本丸広場へ。この本丸広場からは松山市街を一望する事ができます。また、広場の奥、本壇と呼ばれる天守曲輪の上には大天守と小天守、隅櫓などの連立天守群が聳えていますが、この天守群が日本最後の本格城郭建築とされ、最上階の眺望は360度、松山平野や瀬戸内海までも見渡せてしまいます。さらに城内21棟の建造物が国の重要文化財であるなど、名城としての見所は多彩です。
本丸の大手門跡から黒門口登城道を下れば、「二の丸(二之丸史跡庭園)」へと辿り着きます。ここは藩の中枢、表御殿と藩主家族の住居、奥御殿があった場所で、現在は表御殿跡が「柑橘、草花園」、奥御殿跡が「流水園」とされ、水流や芝生などで当時の間取りを示しています。ここでは規模の大きさで知られる「大井戸」の遺構なども必見です。
加えて近年、二之丸史跡庭園は恋のパワースポット、ロマンティックなプロポーズの地として、「恋人の聖地」にも選定されています。結婚式の前撮りの場所としても、情緒溢れる庭園は人気を集めています。
そして松山の地は、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」ゆかりの地でもあります。ロープウェイ東雲口駅の近くには「秋山兄弟生誕地」があり、生家や銅像を目にする事もできます。さらに松山で温泉と言えば「道後温泉」。道後温泉で有名な「道後温泉本館」も、市内電車に乗れば10数分ほどです。伊予鉄道からは松山城と道後温泉本館などの入場券、そして市内の電車やバスが一日乗り放題になる「松山城下めぐりきっぷ」も発売され、利用する観光客も多くなっています。
今回ご紹介した愛媛県松山市の旅行スポット
名称:松山城
住所:愛媛県松山市丸之内
アクセス:JR予讃線「松山駅」から市内電車(道後温泉行き)10分で「大街道」、徒歩5分で松山城ロープウェイ東雲口駅へ
駐車場:専用駐車場あり(有料)
ロープウェイ・リフト運賃:往復大人510円、小人260円
天守観覧料:大人510円、小人(小学生)150円
二之丸史跡庭園観覧料:大人 200円、小人(小学生)100円
参考リンク:松山城総合事務所
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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