日本最大級の西都原古墳群、花々が咲き乱れる丘陵で古代日向の謎に触れる旅
宮崎県にある「西都原古墳群」は、一年を通じて花々が咲き乱れる丘陵に、多くの謎を秘めた多彩な古墳が密集しているスポットとして知られています。今回は日本最大級の古墳群を目にする事ができるこの地で、日向の国の古代ロマンに浸る旅をご紹介していきます。
※写真は西都原古墳群
西都原古墳群は、古墳と自然が調和する史跡公園
春には桜と菜の花が咲き、夏にはひまわり、秋にはコスモスが咲き誇る「西都原古墳群」。ここは自然溢れる風土記の丘として知られている場所です。古墳群は2基の巨大古墳、「男狭穂塚（おさほづか）」と「女狭穂塚（めさほづか）」を主墳として、3世紀～7世紀の300基以上の前方後円墳や円墳、方墳が密集しています。国の特別史跡になっているこの場所の敷地内には、西都原考古博物館やガイダンスセンターも併設されています。
※写真は菜の花と鬼の窟古墳
西都原古墳群の主墳、男狭穂塚と女狭穂塚の不思議
男狭穂塚（おさほづか）は全長175mという大きさで、日本最大の帆立貝形古墳。そして女狭穂塚（めさほづか）は全長180mという大きさで九州最大の前方後円墳。男狭穂塚は「瓊瓊杵尊（ににぎのみこと）」、女狭穂塚の方は妻神の「木花開耶姫（このはなさくやひめ）」の陵墓と言われ、共に宮内庁の陵墓参考地になっています。
そしてこの2つの古墳は、何故かお互いが重なるように築かれています。共に5世紀のものとされていますが、男狭穂塚の方が古く築かれた様子が見てとれます。また、帆立貝式古墳は前方後円墳の築造を認められなかった在地勢力の古墳ともされ、私たちの好奇心を刺激してくれます。
※写真は重なるように築かれた男狭穂塚と女狭穂塚の模型（現地モニュメントより）
神話と古代世界が交錯する異空間、古代日向の不思議
西都原古墳群の派生は国内最古級の3世紀。また、宮崎市には九州最大の前期古墳群である「生目（いきめ）古墳群」があります。辺地である日向の国（現在の宮崎県）に、畿内と同時期にこのような前方後円墳群が造られていることは、歴史上の大きな謎とされています。日向には弥生時代の遺物が少なく、青銅器の出土もありません。縄文文化の歴史からいきなり古墳文化になってしまうと言われ、古墳時代の初期に九州最大の勢力が突如として現れています。
神話では、天孫の瓊瓊杵尊が日向の高千穂峰に降臨し、大山祇神の女（むすめ）、木花咲耶姫命を妻とします。そして木花咲耶姫命は火照命（海幸彦）、火闌降命、彦火火出見尊（山幸彦）を生み、彦火火出見尊の孫、神武天皇が日向から東征の旅に出ます。そんな古代の歴史を現すのが、この西都原古墳群なのです。
西都原古墳群の傍には、木花咲耶姫命を祀っている日向国総社の「都萬（つま）神社」があります。この社は瓊瓊杵尊と木花咲耶姫命が暮らした地であるとされ、傍の八尋殿は2人の御殿の跡、そして児湯の池は彦火火出見尊が産湯を使ったところとされています。西都原古墳群は古代の謎を秘め続け、神話と古代世界が交錯する異空間となっています。
※写真は日向国総社、都萬神社
西都原古墳群は四季折々の花の名所としても大人気
西都原古墳群には2月に白梅が、3月と4月には2,000本の桜と台地一面の菜の花が、そして7月にはひまわり、10月、11月は300万本ものコスモスと、一年を通じて様々な花が楽しめる名所です。さらに隣接している高取山公園はミツバツツジの名所にもなっています。
古墳群の中央にはこの地の観光拠点、西都原ガイダンスセンター「このはな館」があり、古代の暮らしのメニューが楽しめるレストランや農産物の販売も人気です。また、古墳群の奥にある「西都原考古博物館」は、展示の斬新さが評判となっている博物館でもあります。
今回ご紹介した宮崎旅のスポット
名称：西都原考古博物館
住所：宮崎県西都市三宅西都原西5670
開館時間：10:00～18:00 月曜定休
入場料：無料
アクセス：宮崎市宮交シティより「西都原考古博物館前」行きバス約70分
駐車場：専用駐車場あり
参考情報：西都原考古博物館の公式サイト
名称：西都原ガイダンスセンター このはな館
住所：宮崎県西都市三宅4941-1
開館時間：10:00～17:00 月曜定休
入場料：無料
駐車場：専用駐車場あり
参考情報：このはな館のサイト
あらき 獏（ばく）
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
