日本最大級の弥生環壕集落、吉野ヶ里遺跡へ!邪馬台国の時代の暮らしを体験する歴史旅
佐賀平野の吉野ヶ里遺跡は3つの町村にまたがる日本最大級の環壕集落遺跡で、弥生時代の中心的な集落とされています。今回は邪馬台国の時代を彷彿とさせる吉野ヶ里遺跡を探訪し、子供たちにも大人気のイベントをご紹介していきます。
大型の建物や物見櫓などが復元され、歴史公園として甦った吉野ヶ里遺跡
吉野ヶ里遺跡は佐賀県神埼の吉野ヶ里丘陵にある、弥生時代の大規模環壕集落です。大型建物などの地域社会の形成を思わせる遺構に加え、多くの竪穴住居、高床住居、倉庫群、更には青銅器製造の遺構なども発見されています。そしてここは国の特別史跡とされ、大型建物や物見櫓なども復元されて、国営の吉野ヶ里歴史公園となっています。
この吉野ヶ里遺跡の最大の特徴はその防御性にあると言います。丘陵を一周する外壕と、北内郭、南内郭の2つの内郭を守る内壕の二重、三重の環壕。ここはV字型に深く掘られ、土塁、木柵、逆茂木といった防御が施されています。また、内郭には多くの物見櫓がそびえ、城塞のような様子を見せています。
※写真は土塁、木柵に護られた物見櫓と大型建物(祭殿)
王(首長)や支配者層が居住した南内郭と、祭祀の場所とされた北内郭
吉野ヶ里遺跡の2つの内郭は、周囲を深い環壕と土塁、柵で囲まれていて、物見櫓がそびえています。一方の南内郭は竪穴住居が中心で、貴重品である鉄器が数多く検出されていることなどから、王(首長)や支配者層の居住の郭と考えられています。ちなみに北内郭は大型の建物の存在や郭の形態から、政(祭、まつり)ごとの場所と考えられています。ここでは重要な儀礼や祖先への祀りが行われ、田植えや稲刈りの日取り、祭祀の日などを決めたとされています。
※写真は南内郭
古代中国の城郭を思わせる北内郭。その設計思想は異質に見える
祭祀の場所とされる北内郭ですが、二重の環壕と土塁、柵に囲まれ、直線部分の両端を突出させた左右対称の郭は、沖縄のグスク(城郭)の縄張りを思わせます。そしてその入口は日本城郭の虎口。他の弥生環壕集落と比較をすると、そのテクノロジーは異質にも見えます。この設計思想は古代中国の城郭形態によるとも言われ、わが国独自の城柵づくりがこの遺跡あたりから始まった様子ともされています。
※写真は北内郭。現地の説明パネルより
中国大陸や朝鮮半島との交流を思わせる、吉野ヶ里遺跡の出土品
吉野ヶ里遺跡からは銅剣、銅鏡、鉄器、または織物や玉類など、祭祀や装飾に用いられた多数の遺物が出土しています。この中でも有柄銅剣やガラス製管玉などは国の重要文化財にも指定されています。これらの出土品には、中国大陸や朝鮮半島のものと共通した特徴が見られ、その関係性も指摘されています。
※写真は甕棺墓
歴史のロマンに駆られた古代史ファンが、各地から吉野ヶ里を訪れる
吉野ヶ里遺跡では北と南に2つの墳丘墓があり、そこは王(首長)の墓だと考えられています。また、北墳丘墓の周辺には北部九州特有の甕棺墓群があり、2,000基以上の甕棺が600mにわたって並んでいました。発掘された甕棺の人骨には複数の鏃(やじり)が刺さったものや、首が無いものなどがあり、激しい戦いの痕跡も見てとれました。
吉野ヶ里遺跡は脊振山地から伸びた段丘の先端で、当時は有明海が前面に広がっていました。吉野ヶ里遺跡の防御性は、有明海から上陸する勢力に対するものとも見えます。この集落は3世紀ごろに最盛期を迎え、古墳期の始まりとともに消滅していきます。この地は魏志倭人伝で伝わる邪馬台国連合の最前線であり、有明海から上陸する勢力と敵対していたとされる、狗奴国の兵であったのかもしれません。そんな歴史のロマンに駆られた古代史ファンたちが、全国各地からこの吉野ヶ里遺跡を訪れています。
弥生時代の暮らしが体験できるイベントは子供たちに大人気
吉野ヶ里遺跡の楽しみ方は、古代史ファンだけのものではありません。土曜日や日曜日になれば、木の実で木工細工を作る「木工クラフト体験」や、ベニバナなどの植物の染色液でハンカチやスカーフを染める「染色体験」、さらにはそばの実を収穫して石臼で挽き、調理までを体験する「そばの収穫体験」などの他、土器づくりの体験、勾玉づくりの体験など、弥生時代の暮らしを体験するイベントも行われ、これらは子供たちにも大人気となっています。
※写真は藁細工つくり
今回ご紹介した歴史スポット
名称:吉野ヶ里歴史公園
住所:佐賀県神埼郡吉野ヶ里町田手1843
開園時間:9:00~17:00(6月~8月は18:00まで)
入場料:大人(15歳以上)420円、小人(小・中学生)80円
アクセス:JR長崎本線「吉野ヶ里公園駅」徒歩15分
駐車場:東口と西口に駐車場あり(有料)
参考情報:吉野ヶ里歴史公園の公式サイト
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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