大渓谷を走る黒部峡谷鉄道、秘境の地の絶景スポットと山奥の秘湯温泉を体験する鉄道旅
富山県の黒部峡谷に沿って走る「黒部峡谷鉄道」。この鉄道の沿線には美しいダム湖、深い渓谷に架かる鉄橋、滝や深淵、万年雪、秘湯の露天風呂など、一度は目にしてみたい絶景スポットが多数あります。今回は黒部峡谷鉄道のトロッコ電車で、初夏の新緑と夏の渓谷美、そして秋の紅葉など、四季折々の風景を駆け抜ける鉄道旅へとご案内します。
※写真は欅平(けやきだいら)の奥鐘橋
大渓谷沿いをゆっくりと走る黒部峡谷鉄道、片道1時間20分の旅
富山県の「黒部峡谷鉄道」は、北アルプスに源を発する黒部川の深い峡谷に沿って、宇奈月駅から欅平駅までの約20kmを走る鉄道路線です。途中でいくつもの鉄橋やトンネルを越えながら、日本有数の大渓谷を駆け抜けていく片道1時間20分の鉄道旅。そこには感動するほど美しい風景が待ち受けています。
この黒部峡谷鉄道はもともと、黒部峡谷のダムや発電所などの電源開発のための資材運搬鉄道であり、客車は側面がフルオープンの開放型客車、そして天井にも窓を設けたパノラマ車となっていて、初夏の新緑、夏の渓谷美、秋の紅葉といった渓谷の大自然を満喫する事ができるようになっています。
沿線には高さ60mの「後曳(あとびき)橋」や、「鐘釣(かねつり)温泉の秘境露天風呂」、そして紅葉の名所としても知られる「錦繍関(きんしゅうかん)」、さらに岩壁を削りとって造られたという「人喰岩の歩道」など、見応え溢れる絶景スポットが存在しています。
終点までの区間にあるのは全10駅。その中で一般客が乗り降りできる駅は宇奈月(うなづき)、黒薙(くろなぎ)、鐘釣(かねつり)、欅平(けやきだいら)の4駅となっていて、その他の駅は電力関係者のみの利用となっています。また、欅平より先には上部軌道(電力専用鉄道)も繋がってはいるものの、一般客の乗車はできません。
始発駅の「宇奈月(うなづき)」は、黒部川沿いに旅館が立ち並ぶ人気の温泉地
※写真は大渓谷の秘境の中にある宇奈月湖
黒部峡谷鉄道の始発駅である「宇奈月(うなづき)」は、富山県の中で最大の温泉地としても知られます。峡谷の入口に佇む「宇奈月温泉」は、開湯以来多くの文人墨客に愛された名湯であり、湯量も豊富、ここは美肌の湯としても知られるスポットです。渓谷美と黒部の山々を眺めながらの露天風呂、ここに来れば非日常の世界に囲まれた時間を静かに過ごす事ができます。
そして宇奈月を発車したトロッコ電車は新山彦鉄橋を渡り、トンネルを抜けて宇奈月湖沿いをゆっくりと走ります。この時に見えるエメラルド色の湖面と峡谷美のコントラストはまさに絶景の極み。山奥の秘境でしか味わう事ができない景色に触れる事ができます。また、この湖の上流には野生のサル専用のつり橋も架けられていて、運が良ければニホンザルやカモシカがつり橋を渡る姿も目にする事ができます。
※写真は宇奈月の新山彦橋
深山幽谷の秘湯と、出六峰の眺望が人気となっている「黒薙(くろなぎ)」
そして宇奈月から25分ほどの場所となる「黒薙(くろなぎ)」は、黒部川の支流である黒薙川渓谷の狭い崖の上です。この駅のホームの一部は黒薙川に架かる高さ60mの「後曳(あとびき)橋」の上にあり、谷の深さが入山者を後ずさりさせてしまうといった事から後曳(あとびき)と名付けられたと言います。
また、駅から700mほどの山中には、宇奈月温泉の源泉である「黒薙温泉(黒薙温泉旅館)」もあります。ここは黒部峡谷最古の温泉と言われ、古くから「隠れ湯」とされた深山幽谷の秘湯であり、渓谷沿いの混浴露天風呂で知られています。
※写真は黒薙の上流、猫又駅ですれ違うトロッコ電車の風景
絶景の峡谷美と河原の露天風呂が楽しめる「鐘釣(かねつり)」
※写真は万年雪展望台から望む万年雪とエメラルドグリーンの川
そして宇奈月から1時間ほどの場所にある「鐘釣(かねつり)」は、黒部峡谷を挟んで聳える東西の鐘釣山と、紅葉の名所として知られる「錦繍関(きんしゅうかん)」の絶景でも知られるスポットです。また、この地の「鐘釣温泉郷」は江戸時代の文政2年(1819年)に開湯したとされ、昔は山々を歩いて越えていたというほどの秘湯です。
また、鐘釣駅から歩いて5分ほどの場所には「鐘釣美山荘」があり、ここでも開放感溢れる河原の露天風呂を楽しむ事ができます。対岸には万年雪の景色が広がり、野生のカモシカやニホンザルも現れる場所、さらに奥へと進めば「釣鐘温泉旅館」などのスポットもあります。
※写真は鐘釣河原の景観
終点駅の「欅平(けやきだいら)」には、秘境ムード満点の絶景スポットが多数
そしてトロッコ電車は黒部峡谷鉄道の終点駅である「欅平(けやきだいら)」へ。この場所にも多数の絶景スポットが広がっています。下流には「猿飛」の大景観や高さ34mの「奥鐘橋」、岩壁を削って造られた「人喰岩の歩道」など、人生の中で滅多に目にする機会がないであろう景観に出会う事ができます。駅前のビジターセンターには欅平散策をサポートしてくれるナチュラリストが常駐し、ガイド付きのトレッキングも楽しめるようになっています。
※写真は猿飛峡の散策路
尚、欅平駅から徒歩5分ほどの場所にある「欅平温泉(猿飛山荘)」では、原生林の中で峡谷を望みながら露天風呂に入る事もできます。また、徒歩15分ほどの場所にある「名剣温泉」も、切り立った山々に囲まれ、深い峡谷を見下ろす中での露天風呂が人気となっているスポットです。さらにその奥となる「祖母谷(ばばだに)温泉」では、河原から湧き出す温泉に出会う事もできます。
※写真は「猿飛」の景観。駅から徒歩30分ほどの「猿飛」は特別名勝、特別天然記念物とされ、黒部峡谷本流で最も川幅が狭い場所と言われます
最後に黒部峡谷は冬期の積雪量が多く、12月~4月中旬までは鉄道も運休となっているのでご注意ください。ここは春から秋にかけての季節しか踏み入る事ができない山奥の秘境。数多ある日本の景勝地の中でも、指折りのおすすめスポットだと思います。
今回ご紹介した富山県黒部市の旅行スポット
名称:黒部峡谷鉄道
住所:富山県黒部市黒部峡谷口
アクセス:富山地方鉄道「宇奈月温泉駅」から徒歩約5分で黒部峡谷鉄道の「宇奈月駅」へ
駐車場:専用駐車場あり(有料)
営業時間:宇奈月始発7:32~終発15:40(11月16日~30日は始発7:57~終発14:56)
休業:12~4月は運休(積雪量によって休業期間も変動)
料金:大人3,420円~、小学生1,720円~(往復。客席によって異なります)
参考リンク:黒部峡谷鉄道オフィシャルサイト
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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