妙高山麓・笹ヶ峰、歴史ある笹ヶ峰牧場と、自然溢れる雲上の高原を歩く旅
日本100名山にも数えられる妙高山の麓に広がる笹ヶ峰高原。今回は標高1,300mのこの大自然の素晴らしさと、この場所で生きた人々の足跡を辿る歴史旅をご紹介していきます。
新潟県妙高市。冬はスキーリゾートで賑わい、夏は避暑地としても知られる妙高高原の駅から、車でさらに45分ほど走った場所に位置しているのが「笹ヶ峰高原」。ここは妙高戸隠連山国立公園という公園にも指定され、妙高山、火打山、焼山、黒姫山などの名山に囲まれた標高1,300mの大自然。春から初秋にかけては、本格的な登山やトレッキング、キャンプを楽しむ家族連れの姿なども多く見られる場所です。
標高1,300mの高さにある笹ヶ峰には広大な草原が広がり、涼やかな風が吹く。夏場は雄大な自然の中に緑が青々と茂り、秋になれば美しい紅葉が見渡す限りに広がっていく。狐や猿、モグラなどはもちろん、数多くの野生動物たちの楽園であり、山野草の宝庫でもある。
古くは「地蔵ヶ原」とも呼ばれていた笹ヶ峰。江戸時代末期の1811年頃には越後・高田藩によって土地の開拓・開墾が進められ、広大な広葉樹林を切り開いて、馬鈴薯(じゃがいも)の栽培が行われました。しかしこの大自然の厳しさに加え、明治時代中期に起こった馬鈴薯の疫病などもあり、この土地の開発を断念せざるを得なかったと言います。
そして明治35年、この地は「笹ヶ峰牧場」という牧場地へと転換されて現在に至っています。昭和58年からは笹ヶ峰牧場利用組合という組合によって牧場の管理がなされ、夏場には多くの牛たちの放牧地になっています。
笹ヶ峰牧場内にある「京都大学笹ヶ峰ヒュッテ」。この山小屋の歴史も古く、昭和3年に初代の山小屋がここに建てられたと言います。そして山を愛するメンバーたちの手でその後も大切に守り継がれ、現在のヒュッテは1999年に多くの人々の募金協力などもあって建築されたものだそうです。ここは基本的に一般客の宿泊は受け付けていませんが、近年、夏場の一定期間に限って一般開放が行われている事もあるそうです。
笹ヶ峰高原を巡っていると、こういった木から吊るされたお手製のブランコを目にすることも。笹ヶ峰牧場の中にあるグリーンハウスというレストランのすぐ近くにもこういったブランコがありました。
さらにはこんなハンモックを見かけることも。この大自然の中で、数多くの人たちがここにブランコやハンモックを作り、ゆっくりと揺られながら心を休めてきたのかもしれません。
132ヘクタールという広大な笹ヶ峰牧場の中の遊歩道を、およそ2時間半かけて散歩してみます。空は青く、山並みは美しく、草原の緑とのコントラストが本当に印象的な場所。大自然の恵みに触れながらゆっくりと歩みを進めます。
笹ヶ峰高原一帯には遊歩道が整備されていて、森林浴なども楽しめます。今回は牧場を抜けて名水を楽しみ、笹ヶ峰ダムの方向を目指します。
いよいよ笹ヶ峰の美しい自然を散歩へ!
山々と木々、そして草原。心地よい風を感じながら歩いていく。都会の喧騒の中で過ごす毎日とは全く異なる景色。リュックサックを背負って楽しそうに歩く子供たちの姿もみられました。
木々からボトボトと落ちてくるどんぐりたち。牧場のフェンスにはそんなどんぐりたちの姿が。どんぐりを集めて爪楊枝を使い、「どんぐりのコマ」を作ったりもできるんだよ。年配の方々が小さな子供たちに、そんなどんぐりの遊び方を伝えてあげる光景も。
遊歩道沿いに赤い鳥居と石碑、そして小さな石祠(石のほこら)がありました。ここは「笹ヶ峰神社」という神社だそうです。ある方に聞いた話では、かつてここには集落があったそうです。江戸時代末期から明治時代にかけて、この土地の開拓に挑んだ方々が住んだ場所なのでしょうか。残念ながら詳しい由来等は書かれていませんでした。
笹ヶ峰神社周辺の木々や土たち。この大自然の土を踏みしめていると、季節が夏から秋へと移ろっている事が実感できます。
さらに遊歩道を歩いていると「宇棚の清水」という名水に出会えます。平成の名水100選にも選ばれていて、水のせせらぐ音がとても心地よい場所です。ここでは1日あたり4,800トンもの水が湧き、少し下流の清水ヶ池へと注いでいきます。
参考リンク:平成の名水百選「宇棚の清水」(動画)
遊歩道沿いには様々な植物やキノコなどの姿も。上記の美しい紫の花は猛毒で知られるトリカブトだそう。大自然の中には様々な生き物たちが自生しています。
さらに歩みを進めていくと、「清水ヶ池」へ。宇棚の清水が注ぐこの池はまるで鏡のよう。美しく澄んだ水辺の奥には妙高山がそびえます。
「乙見湖」という名前の付く笹ヶ峰ダムへ向かう途中、牧場の牛たちにも出会えました。木陰で陽射しをよけながら、のんびりと牧草の味を楽しんでいます。なんだかとても癒やされる景色の1つでした。
遊歩道沿いには秋の気配も。この高地が真っ赤に染まる季節は、もう目の前のようです。紅葉のシーズンにここを訪れた事はありませんが、きっと素晴らしい景色なのだろうと思います。
そしてゴールである笹ヶ峰ダム(乙見湖)へと到着。この日はトレイルランの大会が行われていたようで、多くのランナーたちで賑わっていました。
そしてこの日は笹ヶ峰高原の中で宿泊。暮れていく空と山の稜線を眺めながら、手料理とお酒を楽しむひと時。かつての江戸時代、この大自然を開拓しようと挑んだ人々が眺めていた景色であり、山を愛する人々が眺めていた景色でもあります。この奥深い笹ヶ峰高原の地にも、自然と人が共生した歴史がありました。
名称:笹ヶ峰高原
住所:新潟県妙高市大字杉野沢
アクセス:JR「妙高高原駅」から車で約45分
レキタビ編集部
歴史スポット巡りや観光、老舗の歴史飯を味わう旅って案外楽しい!と言って頂けるような情報を発信したいと思います。
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