日本有数のパワースポット熊野三山で、悠久の謎に包まれた神々に出会う旅
世界遺産・熊野三山は神々が宿る霊地と言われ、古くはよみがえりの地とも、浄土ともみなされたと言います。今回は多くの参詣者が歩いたという熊野古道を辿り、謎に包まれた神仏習合の神々に出会う歴史旅をご紹介していきます。
※写真は熊野本宮大社の大斎原。日本一高い大鳥居の高さは33.9m
熊野三山を構成する、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社
熊野三山は紀伊半島の南部、熊野の中枢に鎮座する熊野本宮大社と新宮の熊野速玉大社、そして那智勝浦の熊野那智大社の3社の総称です。それぞれが熊野古道(熊野参詣道)によって結ばれ、神仏習合の熊野三所権現として信仰を集めてきました。そしてこれらは2004年、高野山、吉野と共に「紀伊山地の霊場と参詣道」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されました。
※写真は那智大滝を望む熊野那智大社
よみがえりの聖地、浄土ともされる熊野三山を彩る神々を知る
古くから熊野は神や祖先の霊が宿る地とされ、日本書紀にも登場する霊地でした。熊野の三神の始まりは自然信仰に由来すると言われ、奈良時代、平安時代から仏教と習合して仏尊とされています。本宮の主神である家都御子神は阿弥陀如来、新宮の速玉神は薬師如来、そして那智の牟須美神は千手観音を本地とし、熊野三所権現、熊野十二社権現ともされました。
※写真は熊野本宮参詣の曼荼羅
平安時代後期の阿弥陀信仰において、熊野は浄土の場所とされ、皇族や貴族がこぞって参詣し、熊野三山は「よみがえりの聖地」として信仰を集めました。そしてそれはやがて皇族や貴族から庶民にまで広まり、「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど盛んになっていきます。
熊野本宮大社は熊野三山の中心、熊野川の畔に鎮座する
熊野本宮大社は熊野川の中流域である本宮町に鎮座し、主神は家都御子神(けつみこのかみ、熊野坐大神)とされ、太陽の使いとされる八咫烏を神使としています。ここは熊野三山の中心であり、全国約3,000の熊野神社の総本社とされます。しかしこの社の発祥は未だに不明で、神武東征以前には既に鎮座していたとも言われ、社殿は崇神天皇の時代の創建とされています。熊野本宮大社はかつて、大斎原(おおゆのはら)と呼ばれる熊野川の中洲に鎮座していましたが、明治時代の水害によって現在の場所に遷座しました。
※写真は熊野本宮大社の参道
熊野の神々が降臨した地、熊野川河口に鎮座する熊野速玉大社
熊野速玉大社は熊野本宮大社の下流、熊野川河口の新宮市に鎮座し、主神は熊野速玉神(くまのはやたまのかみ)とされます。もとは熊野の神々が最初に降臨したという神倉山の磐座に祀られていたとされ、それ故に神倉山の元宮に対し、こちらは新宮と呼ばれています。熊野速玉大社の創建は景行天皇の時代と言われ、境内にある樹齢1,000年のナギの大樹は熊野権現の象徴とされ、その葉は熊野参詣の守護とされています。
※写真は熊野速玉大社
那智大滝の古代祭祀にルーツを持つという熊野那智大社
熊野那智大社は那智勝浦町の那智大滝に鎮座し、主神は熊野牟須美神(くまのむすみのかみ、夫須美神)とされます。古くは修験の霊場であり、落差133mの那智大滝を神体とする自然信仰にそのルーツがあると言われます。この熊野那智大社は仁徳天皇の時代の創建とされ、傍には青岸渡寺があり、別宮として那智大滝を祀る飛龍神社があります。
※写真は熊野那智大社
世界遺産・熊野古道はトレッキングのコースとしても人気
熊野古道とは田辺から熊野本宮へと向かう中辺路、田辺から海岸線沿いを那智、新宮方面へと向かう大辺路、そして高野山から熊野本宮へと向かう小辺路、さらに紀伊路と伊勢路を指します。そしてこれらの道の中でも、特に多くの参詣者が歩いたのが中辺路でした。山深い中辺路を歩いた末に辿りつく場所が熊野本宮であり、2004年に熊野古道が世界遺産に登録されて以来、トレッキングのコースとしても人気を集めています。初心者向けにお薦めと言えるコースは中辺路の発心門王子から熊野本宮大社までの7kmの道のり。美しい眺望ポイントが点在し、初心者でも歩きやすい道のり、そしてここにはガイドツアーもありますよ。
今回ご紹介した熊野三山の社
名称:熊野本宮大社
住所:和歌山県田辺市本宮町本宮
アクセス:JR紀勢本線「新宮駅」からバス(熊野交通)1時間20分
駐車場:社頭および河原に無料駐車場あり
参考情報:熊野本宮大社の公式サイト
名称:熊野速玉大社
住所:和歌山県新宮市新宮
アクセス:JR紀勢本線「新宮駅」から車で約5分、徒歩約15分
駐車場:境内に駐車場あり
参考情報:熊野速玉大社の公式サイト
名称:熊野那智大社
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山
アクセス:JR紀勢本線「紀伊勝浦駅」からバス(熊野交通)約30分
駐車場:神社駐車場あり
参考情報:熊野那智大社の公式サイト
あらき 獏(ばく)
情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。
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