トップ > 関西地方 > 兵庫県 > 伊弉諾神宮、国産み神話によって最初に生まれた島でその中枢にあった一宮を訪ねる旅

伊弉諾神宮、国産み神話によって最初に生まれた島でその中枢にあった一宮を訪ねる旅

記事公開日:2017/01/10

記紀(古事記と日本書紀)に登場する「国産み」神話において、最初に生まれた島とされる「淡路島」。そしてその中でも伊弉諾神宮は、伊弉諾尊が淡路島の多賀に「幽宮(かくりのみや)」を構えて余生を過ごした場所とも言われます。今回はこの神話の地を訪ね、その由緒に触れる旅へとご案内します。

伊弉諾神宮の拝殿

※写真は舞殿を兼ねる「拝殿」

 

記紀に伝わる国生みの神話とは

 

日本最古の歴史書である「古事記」「日本書紀」は、世界の創生を記す天地開闢の神話から始まります。混沌とした宇宙で「天地(あまつち)はじめて發(ひら)けしとき」に高天原に造化三神が生まれ、続く神世七代の最後の伊弉諾尊(イザナギノミコト)・伊弉冉尊(イザナミノミコト)の二神に対し、「この漂へる国を修め固めて完成させよ」と命じます。

 

神話を表す画像

 

イザナギ、イザナミは天浮橋(あめのうきはし)に立ち、天沼矛(あめのぬぼこ)で大海原をかき回し、矛の先から滴り落ちた雫が「淤能碁呂島(おのごろじま)」となります。そして二神はこの島に降り立って国産みの儀式を執り行い、最初に生まれたのが淡路島(淡道之穂之狭別島)であり、続いて四国、隠岐、九州などの「大八島(おおやしま)の国」が生まれ、日本の国土が出来上がります。

 

神明鳥居(高さ27尺)

※写真は全国最大規模の花崗岩製の神明鳥居(高さ27尺)

 

イザナギは「天照大神」にこの世の統治を託す

 

国産みを終えた二神は続いて家の神、海の神、火の神など、自然を形作る多くの神々を産みだします。そして最後に天照大神(アマテラス)、月読命(ツクヨミ)、須佐之男(スサノオ)の三貴神が産まれ、イザナギは世界を3つに分けて統治するよう命じます。記紀ではその後、日本草創期の壮大な歴史物語が展開されていきます。

 

表神門

※写真は表神門

 

その後のイザナギは淡路島の「幽宮」に鎮まる

 

イザナギは神の務めを全て終えた頃、病で衰弱していて霊は幽界に遷ろうと(命が途絶えようと)していました。そこで、「幽宮(かくりのみや)」を淡路の州(淡路島)に構へ、静かに長く隠れたとあります。(「構幽宮於淡路之洲」:日本書紀6段本文-1)

 

伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)の由緒では、イザナギの住居跡に御陵(みささぎ)が営まれ、至貴の聖地として最古の神社が創始されたのが起源とされています。現在はイザナミもここに合祀され、夫婦2柱が祀られるようになっています。ここは地元では「いっくさん」として親しまれ、昭和29年(1954年)には昭和天皇に神宮号を宣下され、伊弉諾尊神宮と称すようになっています。

 

本殿

※写真は「本殿」。棟に千木・鰹木を配し、前方の幣殿と連結した一屋根造

 

古の時代に創建された伊弉諾尊神宮

 

平安時代の法制史料「新抄格勅符抄」には、大同元年(806年)及び天慶3年(940年)に淡路の伊佐奈伎神社に封戸されたという記録があり、伊弉諾尊神宮はこの頃には創建されていたと見られます。

 

また、江戸時代には二町四方(約4万平方メートル)の社地を持ち、明治以前は御陵を中心とした神域に周濠が巡らされた禁足の聖地であったとされ、正面の池は濠の遺構と言われます。

 

本殿は明治時代に後背の御陵地を整備して移築され、檜皮葺で神明造からの三間社流造向拝付で建立されたもの。神輿庫や東西の御門は旧幕府時代の阿波藩主の寄進と言われます。

 

社殿最古の東門

※写真は社殿最古の「東門」。藩主・蜂須賀家が寄進したものと言われます

 

国産み神話の中で最初に生まれた「特別な島」が淡路島

 

かつて、淡路島と大和朝廷には密接な関係があったと言われます。淡路島は古代・弥生時代の銅鐸や銅剣が多く出土する地域であり、大陸と繋がる海の大動脈、瀬戸内海の東端に位置し、南北にも繋がる交接点の島。これらの理由から、おのずと海上交通の要の地になったと言われます。

 

境内の風景

 

また、時の大和朝廷は交易の要衝である淡路島に「屯倉(みやけ)」を置きました。「延喜式」によると、淡路の塩や海の幸などを調達する「御饌都国(みけつくに)」として、神事の際の神饌(供物)を貢進する関係となっていきます。

 

淡路の「海人(あま)」と呼ばれる海の民の活躍によって力をつけてきた大和政権。淡路島と朝廷との深い関係の中で、海人に伝わる「島生み」の伝承が「国産み神話」となり、淡路島が最初に生まれる「特別な島」として取り込まれていったと見られています。

 

県指定天然記念物の夫婦楠木

※写真は県指定天然記念物の夫婦楠木

 

伊弉諾神宮には樹齢約900年、高さ30m余りの「夫婦楠木」も残ります。イザナギ、イザナミの二神の御神霊が宿る神木であり、夫婦円満や安産子授の神木として信仰されています。

 

昭和天皇お手植えの樹木

 

日本遺産としても認定された淡路島

 

平成28年(2016年)4月、淡路島は日本遺産として認定されました。これは淡路が「国産み神話の背景に金属文化をもたらし、後に塩づくりや巧みな航海術で畿内の王権や都の暮らしを支えた」と言われる点にも起因するようです。この日本遺産(Japan Heritage)とは、今まで点在していた遺産類を文化・伝統を語るストーリーとして繋げ、その魅力や特色を総合的に活用するために認定するものなのだそうです。平成27年から始まり、平成28年現在で37件が登録されています。

 

参考URL http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/nihon_isan/

 

今回ご紹介した兵庫県淡路市の旅行スポット

 

名称:伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)
住所:兵庫県淡路市多賀740
アクセス:神戸淡路鳴門自動車道「津名一宮IC」

 

播磨翁播磨翁

兵庫県の播磨国に在住。ワクワク出来る歴史旅をご紹介できれば幸いです。個人的には謎がありそうなディープな歴史が好きです。

 

淡路島の人気宿ランキングをチェック

関連するお薦め記事

人気があって、しかも満足度が高いという宿はどこ?日本全国の旅館の中から上位30の宿をランキングでご紹介!
憧れの絶景宿、文化の香り高い老舗宿、そしてコスパ力の高いお得な宿も!ネット予約で5%のポイント還元!
テーマで旅行スポットを探す
地域で旅行スポットを探す