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筑豊唯一の芝居小屋、嘉穂劇場に秘められた女劇場主と役者たちの交流ストーリーを偲ぶ旅

記事公開日:2016/12/02

筑豊、福岡県飯塚市の「嘉穂劇場」は、江戸情緒あふれる歌舞伎様式の芝居小屋。このレトロ感あふれる雰囲気が人気を集めています。大衆演劇の灯を守り続けるこの芝居小屋は、これまでに幾度となく存続の危機に襲われました。今回はこれらの苦難をのり越えた芝居小屋に秘められた、女劇場主と彼女を支えた役者や芸能人たちの交流ストーリーをご紹介していきます。

福岡県飯塚市の嘉穂劇場


大衆演劇の殿堂として、多くのファンに愛される「嘉穂劇場」

 

福岡県飯塚市の嘉穂劇場は、大正10年(1921年)に建てられた「中座」を前身とし、昭和6年(1931年)に伊藤隆によって開場しました。ここは木造2階建ての江戸歌舞伎小屋様式で、1,200人を収容する客席は畳敷の桝席。そして桝席の左右には2本の花道と桟敷席があります。舞台には直径16mの回り舞台やセリを備え、後方には戦時中の臨官席(警察官席)などが残っています。

 

現在、公演やリハーサルが無い日は劇場内部が公開され、バックヤードを見学する事ができます。舞台下、奈落には人力で操作する回り舞台やセリの下部機構、花道から出入りする役者の控室、鳥屋(とや)、小道具室などが見所となっていて、情緒あふれる雰囲気を目にする事ができます。また、毎年9月に行われる「全国座長大会」などの芝居公演は未だに根強い人気を誇り、多くのファンを集めています。

 

歌舞伎様式の嘉穂劇場の建物

※写真は情緒あふれる歌舞伎様式の嘉穂劇場

 

嘉穂劇場のポスターたち

 

相次ぐ苦難と時代の激流をのり越えた劇場主、伊藤英子の奮闘を知る

 

嘉穂劇場の開場当時は筑豊炭鉱の全盛期であり、飯塚の街は好景気に沸いていました。そして嘉穂劇場で行われる大衆演劇や芝居の公演は、炭鉱の労働者とその家族たちの姿で大いに賑わいました。しかし、やがて石炭産業は衰退し、それに伴って1962年代に延べ250日ほどもあった公演数は、1970年代に入ると10数日までに落ちこみ、嘉穂劇場は存続の危機に晒されていきました。

 

劇場主であった伊藤隆の死後、その経営を引き継いだ娘の伊藤英子は、この難局を打開すべく奮闘します。昭和54年(1979年)から九州演劇協会による「全国座長大会」などが開催され、この芝居小屋のレトロな雰囲気が話題を呼んで観客数が少しずつ戻っていき、年間の公演数も40日ほどまでに盛り返します。

 

しかしそれも束の間のこと、嘉穂劇場には最大の危機が訪れました。平成15年(2003年)7月の集中豪雨によって、飯塚市の中心部は浸水、この嘉穂劇場は客席や舞台、花道などが浮いてしまい、1階が使用不能となる被害を受けてしまいます。

 

桝席と桟敷席が広がる館内の風景

※写真は桝席と桟敷席が広がる館内の風景

 

女劇場主を支えた役者や芸能人たち。彼らとの心温まる交流ストーリー

 

いよいよ存続の危機を迎えた嘉穂劇場に対し、九州演劇協会の玄海竜二(玄海竜ニ一座)が立ち上がります。そして玄海竜二は知己の津川雅彦らに協力を要請、そして津川雅彦は芸能人仲間に呼びかけて、中村玉緒、明石家さんま、中村勘九郎(勘三郎)などといった俳優や芸能人たちがこの嘉穂劇場に駆けつけ、復旧のためのチャリティイベントが開催されました。

 

このイベントに先立って、飯塚市中心の商店街では「お練り」が行われ、これが大きく報道されて評判を呼びます。そして多くの観客たちが集まったイベントでは、田村正和や木村拓哉など多くの芸能人が提供した品々がチャリティオークションに並び、これもまた話題を集めました。

 

そんな役者や芸能人たちの援助、そして全国のファンからの募金などもあり、水害発生の1年後には復旧工事が行われるまでになりました。そして平成16年(2004年)9月にようやく嘉穂劇場は復興し、11月に復興公演が行われました。

 

また、平成18年(2006年)には国の登録有形文化財に登録されるなど、嘉穂劇場は大正、昭和、平成と続く九州の芸能史を代表する大衆劇場として存在感を見せます。そしてそんな中で平成22年(2010年)、経営を引き継いだ伊藤英子は91年の生涯を閉じ、現在はその子の伊藤英昭によって嘉穂劇場は運営されています。

 

小道具部屋の風景

※写真は小道具部屋。伊藤英子と渥美清、永六輔らのツーショット写真が何気なく飾られ、英子の交流の広さとその人柄を偲ばせます

 

館内に展示された昭和初期のチラシや入場券

※写真は館内に展示された昭和初期のチラシや入場券

 

今回ご紹介した福岡県飯塚市の旅行スポット

 

名称:嘉穂劇場
住所:福岡県飯塚市飯塚5-23
開館時間:9:00~17:00
見学料金:大人300円 小学生100円(公演日などは見学できません)
アクセス:JR「飯塚駅」から徒歩約15分
駐車場:専用駐車場あり(有料)
参考リンク:嘉穂劇場公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

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