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天領日田、かつて九州の政治経済の中心地となった街の足跡を巡り、繁栄の秘密を知る旅

記事公開日:2016/05/20

九州の小京都と呼ばれる歴史の街「日田」。江戸時代には西国郡代が置かれ、九州の政治経済の中心地として繁栄を誇りました。今回はかつての日田の街の足跡を巡りながら、日田の街の繁栄の秘密を知る旅へとご案内します。

豆田町の御幸通り

※写真は豆田町の御幸通り。国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されています

 

天領時代の伝統と文化が楽しめる、日田の豆田町を歩く

 

豆田町の中心、御幸(みゆき)通りに入ると、まずは居蔵造りの「草野本家」があります。この草野本家は桝屋の屋号で製蝋業を営み、大分県最古の商家として県指定有形文化財に指定されています。また、すぐ近くにある「天領日田資料館」は豆田地区の町並み保存運動の拠点となっていて、日田の天領時代の繁栄ぶりを偲ばせる資料が展示されています。そしてその先には料亭建築を活かした資料館「市山亭懐古館」などを目にする事もできます。

 

廣瀬資料館

※写真は廣瀬資料館

 

横道の東西筋に入れば、儒学者・廣瀬淡窓の生家である「廣瀬資料館」が佇みます。廣瀬本家は博多屋を屋号とする豪商で、その当時の品々や書画などが展示されています。そして東西筋を抜けた上町通りにも白壁の商家が甍を並べており、日本丸館、薫長(くんちょう)酒造資料館などが人気スポットとなっています。

 

その他にも豆田町では1月の「十日恵比寿」や早春の「酒造開き」、そして旧家に伝わる雅やかな雛が一挙に公開される、3月の「天領日田おひなまつり」などのイベントも人気です。また、夏の「日田祇園祭」では絢爛豪華な山鉾が町並みを巡行し、提灯で飾られた夜の「晩山」で祭りは最高潮へと達していきます。

 

日本丸館

※写真は日本丸館。木造4層3階建て、展望楼をもつ薬種屋です

 

薫長酒造資料館

※写真は薫長酒造資料館

 

西国郡代の役所跡も、ぜひ立ち寄っておきたいスポット

 

豆田町の北、花月川の対岸一帯には西国郡代の役所「日田陣屋(代官所)跡」があります。かつての日田は幕府直轄の天領であり、日田代官が置かれていました。そして江戸時代の中期には西国筋郡代が置かれ、九州の政治経済の中心地となりました。

 

日田陣屋跡の堀と長塀

※写真は日田陣屋跡の堀と長塀。日田が天領となる以前、この月隈山丘陵には日田の領主たちが居城とした永山城がありました。山頂の本丸には石垣が残ります

 

西国郡代のお膝元、日田の繁栄の秘密

 

日田では西国筋郡代によって筑後川の水運を使った交通路が開かれますが、もともとの日田は不便な山峡の地でした。その日田がここまで繁栄したのには、当時のそれなりの理由がありました。

 

江戸時代の中期、日田は幕府の九州統治の拠点とされ、幕府の公的資金が日田の商人たちによって運用されました。西国筋郡代の権威を背景としたこの資金は「日田金」と呼ばれ、日田の商人たちを通して九州の大名や豪商に貸し付けられ、莫大な利益を生み出していきます。そして日田は九州の経済を支配するようになりました。

 

この日田金の運用で成長した豆田町の商人は「掛屋(かけや)」と呼ばれ、廣瀬本家の博多屋や、草野本家の升屋などの豪商が育っていきます。特に廣瀬本家は西国筋郡代の力を背景に、新田開発や植林事業、干拓事業なども手がけました。

 

日田の資金力が、明治維新の原動力となる日本最大の私塾「咸宜園」を生んだ

 

豆田町の南には「咸宜園(かんぎえん)」があります。この咸宜園は江戸時代後期の儒学者・廣瀬淡窓が開いた私塾ですが、淡窓は前述の掛屋、博多屋の長男だったものの、病気がちであった事から学問の道を選び、資金力を背景にして文化14年(1817年)に咸宜園を開きました。

 

この時の咸宜園は万民平等の精神による全寮制で、全国から塾生が集い、明治時代の閉塾までに4,800人もの塾生を輩出しました。蘭学者の高野長英や兵学の大村益次郎など、咸宜園で学んだ塾生たちはやがて学者や志士として活躍し、来るべき新たな明治維新の原動力となっていったのでした。

 

咸宜園、秋風庵

※写真は咸宜園、秋風庵

 

名称:天領日田資料館
住所:大分県日田市豆田町11-7
アクセス:日田市内循環バス「豆田町」そば
駐車場:近隣駐車場あり
開館時間:9:00~17:00
入館料:大人:310円、小・中・高生210円

 

名称:廣瀬資料館
住所:大分県日田市豆田町9-7
アクセス:日田市内循環バス「豆田町」そば
駐車場:近隣駐車場あり
開館時間:9:00~17:00
入館料:大人:450円、小・中・高生350円
参考リンク:廣瀬資料館公式サイト

 

名称:咸宜園
住所:大分県日田市淡窓2-13
アクセス:日田市内循環バス「咸宜園」そば
駐車場:専用駐車場あり
開館時間:10:00~16:00
参考リンク:咸宜園公式サイト

 

あらき 獏(ばく)あらき 獏(ばく)

情報誌の編集者を経て、現在は文化、歴史系フリーライター。歴史を側面から探ることで、歴史の謎解きを楽しんでいます。

 

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