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長崎・グラバー園、洋と和の建築が調和する文化財を巡り、異国情緒の時代に浸る旅

記事公開日:2016/02/01

鎖国下の江戸時代にあっても、出島を通して外国との交易を行っていた長崎。この街には1859年の本格的な開港と同時に日本へやってきて、日本の近代化を牽引した多くの外国人たちも生活していました。今回は人気の観光スポットとなっているグラバー園を中心に、東山手・南山手の旧外国人居留地を散策する長崎旅をご紹介していきます。

グラバー園

※写真は丘の上にあるグラバー園

 

日本の近代化に大きく貢献したグラバーの住宅跡

 

イギリス、スコットランドに生まれたグラバーは1859年に日本を訪れ、グラバー商会を立ち上げました。当時の日本は明治維新直前の激動期であり、当初は生糸などを扱っていたグラバーも武器を扱うようになっていきます。グラバーは明治維新後も政府を相手に武器や機械を輸入していましたが、やがて武器の需要が少なくなり、グラバー商会は倒産してしまいます。

 

しかしグラバーは日本の若い志士たちを援助し、伊藤博文らに英国への留学を斡旋するなど、日本の近代化にも大きな貢献を果たしています。商会が倒産した後もグラバーは日本に残り、岩崎弥太郎などと共に炭鉱や後のキリンビール(麒麟のラベルを考案した)となるブルワリーの経営にも携わるなど、1911年に死去するまでその生涯を日本で過ごしました。

 

旧グラバー住宅

※写真は旧グラバー住宅

 

洋風建築と和風建築が調和した旧グラバー住宅

 

長崎のグラバー園の中心となるのは、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」を構成する建築物として、世界遺産にも登録された「旧グラバー住宅」です。この建物は日本に現存する木造の洋館としては最古のもので、コロニアル様式の建物と和式の瓦が違和感なく融合しています。

 

旧グラバー住宅の内部

※写真は旧グラバー住宅の内部

 

コロニアル様式の室内は開放的で、訪れたのは暑い日でしたが風通しが良く、グラバーの故郷であるスコットランドと比較して、蒸し暑い日本の夏を快適に過ごすための工夫ではないかと言われます。

 

旧ウォーカー住宅

※写真は旧ウォーカー住宅

 

グラバー園内に立ち並ぶ洋風邸宅

 

グラバー園は当時の居留地の一部分がそのまま保存されたものであり、グラバーと同時期にイギリスから渡来した人々が住んだ旧リンガー住宅や旧オルト住宅なども残されています。旧ウォーカー住宅をはじめ、他の建築物はグラバー園の外から移築されたものですが、現在ではこの風景の中に調和し、1つの景色を成しています。

 

旧外国人居留地を造った兄弟たちの存在

 

旧居留地が作られた過程には、活躍した日本人の兄弟がいます。それは兄の北野織部、そして弟の小山秀(秀之進)という天草出身の兄弟であり、兄は居留地の埋め立てや造成を行い、弟は造成された居留地に住む外国人の洋館を次々と建設していきました。また、弟の小山秀は大浦天主堂の施工も行った他、グラバー園内の住宅やオランダ坂の石畳など、旧外国人居留地内の様々な建築物を造り上げ、現在ではそれらの建築物の多くが世界遺産や重要文化財に指定されています。洋風建築という、当時の未知の世界へと分け入った小山秀は、豪放磊落な人物だったとも伝えられています。

 

小山が手掛けた大浦天主堂

※写真は小山が手掛けた大浦天主堂

 

東山手甲十三番館

※写真は東山手甲十三番館

 

長崎の旧居留地に残る洋館を散策

 

グラバー園を後にして、付近の洋館を散策してみます。この界隈は旧居留地の中心地であり、洋風建築が数多く建ち並んでいるエリアです。オランダ坂の入り口には水色の外装が涼しげな「東山手甲十三番館」があり、ここはかつてフランスの領事館だった建物であり、近年になって長崎市が購入して無料で開放しています。ここも国の登録有形文化財ですが、中には喫茶スペースなどもあり、散策の疲れを癒すことができるようになっています。

 

東山手十二番館

※写真は東山手十二番館

 

東山手甲十三番館の坂上にある「東山手十二番館」は1868年に建築され、ロシア領事館やアメリカ領事館などとして使用されていました。現在では長崎市が所有し、旧居留地私学歴史資料館として利用されています。ここも白い瀟洒な建物が印象的な国指定の重要文化財です。

 

旧香港上海銀行長崎支店記念館

※写真は旧香港上海銀行の長崎支店記念館

 

さらに「旧香港上海銀行長崎支店記念館」は、長崎市内の洋館では最大クラスの建築物で、1904年に建築されました。香港上海銀行が撤退した後は警察署や民俗資料館などとして利用され、現在では銀行カウンターが残されている1階が多目的ホールに、そして2階から上は長崎と上海の歴史に関する資料が並ぶ資料館となっています。この石造りの重厚な建物もまた、国の重要文化財に指定されています。

 

今もかつての時代の面影を残している東山手・南山手地区。その陰には北野・小山兄弟をはじめとした市井の人々の尽力があり、居留地に住む外国人と日本人たちが臆することなく異文化に向かっていった当時の気概のようなものを感じさせられます。今回は旧外国人居留地をテーマにご紹介した長崎の街ですが、長崎にはその他にも見るべきスポットが沢山あります。皆さんも九州を訪れたらぜひ、この街の魅力を再発見する旅を楽しんでみてください。

 

今回ご紹介した長崎旅のスポット

 

名称:グラバー園
住所:長崎県長崎市 南山手町8番1号
開園時間:8:00~18:00(入園受付は17:40に終了)
休園日:年中無休(年末年始も休まず開園)
入園料金:大人610円・高校生300円・小中学生180円
アクセス:長崎電気軌道停留場「大浦天主堂下」または「石橋」で下車、徒歩約8分
駐車場:専用駐車場なし(近隣に市営松が枝町駐車場あり)
参考リンク:グラバー園の公式サイト

 

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